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【山陽新聞】 日ロ共同経済活動 実施ルールなお見通せぬ

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 安倍晋三首相が、プーチン・ロシア大統領と首脳会談を行い、北方領土を舞台に日ロが行う共同経済活動で早期実現を目指す5項目を決めた。ただ、事業の前提となる双方の立場を害さないルールづくりでは進展がなく、懸案の解決は先送りされた。
 共同経済活動は、昨年12月の首脳会談で実現に向けて協議を開始することで合意し、事務レベルで折衝してきた。両国の政府や民間が出資し、北方領土内で共同事業を行う構想である。
 5項目は、ウニやホタテなどの養殖、島巡りといった観光ツアーの開発、温室での野菜栽培などである。今後、具体化を進めていくため、関係省庁の局長級で構成する作業部会の設置でも合意した。
 日本側は、共同経済活動を、長年動かなかった北方領土問題の打開に向けた重要な一歩と位置付けている。まずは人や物の往来を活発にし、相互の信頼関係を醸成して北方四島の帰属で譲歩を引き出す道筋を描いている。ロシアには日本からの投資を呼び込む狙いがある。
 ただ、協議は難航必至だ。活動は日ロの双方が自国の領土や領海と主張する場所で行われる。進出企業への課税や、違法行為の取り締まりといった法的ルールを取り決めておくことが不可欠となる。
 日本は互いの法的立場を害さないよう「特別な制度」を設けて実施するよう求めてきた。一方のロシアは自国の法の下で行うとの立場を崩していない。日本が相手の言い分を認めれば、主権の主張を放棄するに等しい。今後の協議で最大の課題となる見通しだが、両者の隔たりは大きく、解決は見通しにくい。
 ロシアは先月、国内外の投資を呼び込む狙いで色丹島を拠点に経済特区を創設した。水産工場や住宅、港湾などのインフラ整備にも乗り出した。自国の主権下で北方領土を開発していく意思を鮮明にしたとも言える。第三国が進出する可能性もちらつかせ、共同経済活動の交渉が自国ペースで進むよう、日本を揺さぶる狙いもあるようだが、双方の合意に水を差す行為だ。
 昨年11月には択捉島、国後島への地対艦ミサイルの配備が明らかになっている。インフラ投資や軍備増強の進展で、日本への返還に向けたハードルがさらに高くなる懸念がある。
 日本が期待するのは、安倍首相とプーチン氏が19回にわたる首脳会談で築いたとされる個人的な信頼関係だろう。これをてこに難局の打開を図りたい考えだ。ただ、プーチン氏は来年3月に大統領選を控え、弱腰の外交ととられるような姿勢は取りにくくなっている。領土を巡る問題で譲歩を引き出すのは当面、困難との見方が強い。
 領土問題で先行きが見えぬまま経済協力が先行し、ロシアに「いいとこ取り」をさせるわけにはいかない。粘り強く慎重な交渉が求められる。

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