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【京都新聞】 膨らむ防衛費  厳格な検討を求めたい

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 防衛費の膨張が止まらない。防衛省は2018年度予算の概算要求で、米軍再編関連経費を含め過去最大の5兆2551億円を計上した。防衛力強化を掲げる安倍晋三政権下で要求増は6年連続、17年度当初予算比2・5%増となる。
 北朝鮮の核・ミサイル開発など日本を取り巻く安全保障環境が厳しいのは理解できるものの、上限のない「青天井」を認めるわけにはいかない。本当に必要な装備、対応能力であるのか、費用対効果や優先度など厳格な検討を求めたい。
 北朝鮮に対する弾道ミサイル防衛(BMD)を重視した要求が目立つ。海上自衛隊のイージス艦に搭載する改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」取得費や、ミサイル探知能力が向上する新方式の次期警戒管制レーダー(MIMO)の開発費といった装備拡充だ。中国の海洋進出をにらんだ南西諸島の防衛強化策も盛り込まれた。
 注目すべきはBMDの新装備となる地上配備型の迎撃システム「イージス・アショア」だ。「事項要求」として金額が明示されず、年末の予算案編成時に設計費が計上されれば総額がいっそう膨らむ。導入後も要員や整備維持の経費がかさみ、重い財政負担になりかねない。
 新たな体制によってミサイルの探知や迎撃の精度が高まるとされる。しかし、想定以上に発射能力を向上させている北朝鮮に対応できるのか、懸念を拭えない。地域情勢の「脅威」が増す今こそ、国民の理解を得やすいとみての増額要求とは考えたくないが、不要不急の装備まで含めていないだろうか。
 防衛費は5年ごとの中期防衛力整備計画で総額を決めている。02年度をピークに一時減ったが、第2次安倍政権以降、当初予算ベースで17年度まで5年連続で増加し、5兆円超の規模に達した。国内総生産(GDP)比1%内に収まってはいるものの、安倍首相は「1%枠」の撤廃を明言してきた。
 首相は13年12月に閣議決定した防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」の見直しを指示。トランプ米政権発足に伴い、米軍との連携強化の一環として自衛隊の役割の見直しも議論され、新大綱に基づき防衛費の大幅増につながる可能性がある。
 国の予算概算要求は一般会計総額が約101兆円と、4年連続100兆円を突破した。国民の命と暮らしを守る重要さは言うまでもない。だが財政事情を考えれば防衛費を「聖域」扱いにするわけにはいかない。
 さらなる財政悪化を招きかねない防衛力強化が国民的な議論抜きに進められてはなるまい。適正な防衛力について国会できちんと論議してもらいたい。
 米国が歴史的規模となる国防費の増額方針を打ち出し、中国の国防費も年を追って増大しつつある。北朝鮮は核・ミサイル開発を一段と加速しており、アジア太平洋地域は軍拡競争の様相を呈し始めている。
 既に世界有数の水準にある日本が安易に防衛費を増やせば、かえって地域を不安定にする可能性もある。まずは相互理解を深める外交努力こそが基本であることを肝に銘じたい。

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