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【読売新聞】 米国の移民政策 議会の怠慢が混乱を拡大した

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 子供の時に米国に来た不法移民の若者の多くは社会に定着し、労働力として経済を下支えしている。在留や就労を認める措置の法制化を議会が怠ってきた責任は重い。
 トランプ米大統領が、「ドリーマー」と呼ばれる若者の救済制度を撤廃する方針を表明した。オバマ前政権が大統領権限で労働許可などを与えたのは「過ちだ」と主張し、議会が6か月以内に代替する法律を策定するよう促した。
 トランプ氏は昨年の大統領選で、制度見直しを掲げていた。「移民が職を奪い、治安悪化を招いた」と考える支持層に、公約実現を訴える狙いもあるのだろう。
 「ドリーマー」は、親に連れられて16歳までに入国し、5年前の制度導入時に30歳以下だった若者だ。通学中や高校卒業などの条件を満たせば、強制送還を猶予され、在留資格や就労許可の2年ごとの更新も可能になっている。
 メキシコなどの中南米系を中心に、その数は80万人に上る。母国とのつながりは薄い。現制度に代わる法律が半年で制定されない場合、在留期限が切れた人から強制送還される可能性がある。
 若者らの抗議運動は全米に広がった。ワシントン州などでは、継続を求める訴訟を起こす動きも出ている。社会の亀裂が一段と深まるのではないか。
 対象者が国外に退去した場合に人材の穴を短期間で埋めるのは、困難だろう。消費や税収の喪失に伴い、国内総生産(GDP)が減るとの試算もある。産業界への悪影響は避けられまい。
 アップルやグーグル、マイクロソフトなど、「ドリーマー」を雇用するIT企業のトップが、「彼らは地域社会と経済に貢献してきた」として、制度の恒久化や法制化を求めたのは理解できる。
 問題なのは、こうした現実に適応するため、抜本的な移民制度改革の必要性が長年指摘されながら、議会が機能せず、立法措置を先送りしてきたことだ。
 オバマ前政権と民主党は、一定の条件下で若者らに市民権を与える法案を推進した。共和党の反対で頓挫した経緯がある。共和党は、厳格な移民政策を求める強硬派と、市民権付与に前向きな穏健派の間で分裂が続く。
 トランプ氏の手法は強引だが、声明で「責任ある移民制度改革」を唱え、「議会は行動する時だ」と呼びかけたのには一理ある。共和党と民主党は政治闘争から離れて、国民の幅広い支持が得られる法案をまとめねばならない。

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