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【中国新聞】 人づくり革命 どんな社会目指すのか

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 安倍政権が新たな看板政策とする「人づくり革命」を具体化させる論議が動きだした。長寿社会を迎え、何歳になってもチャレンジしたり、誰もが望む教育を受けたりできる社会制度を作るのが狙いという。
 方向性を話し合う、担当大臣の茂木敏充経済再生担当相ら関係閣僚と有識者による「人生100年時代構想会議」の初会合がきのうあった。今後、教育の無償化や学び直し、大学など高等教育改革、企業の採用多元化や高齢者雇用などについて議論する。予定では、年末に中間報告、来年6月をめどに最終報告を取りまとめる。
 教育無償化が大きな柱と言う看板政策だが、何を目指すのか分かりにくい。そもそも構想も安倍晋三首相が通常国会の閉会を受けた6月の会見で唐突にぶち上げた。加計学園問題などで逆風にさらされていた時である。新たな政策を打ち出し、目先を変えたかったのだろうか。
 看板政策として今まで、地方創生や「女性が輝く日本」「1億総活躍社会」などを掲げてきた。今回、「人づくり革命なしには1億総活躍社会は実現できない」と安倍氏は話しているが、順番が逆だったのか。まずは、従来の政策がどこまで実現し、今後の展望や課題は何か検証を急ぐのが筋ではないか。
 「人づくり革命」担当相の茂木氏は「人生100年時代を見据えた経済・社会システムを実現する」と説明する。長寿社会で「老後」が長くなっていく中、学校や就職、定年を同じ年齢で迎える一律的な発想から抜け出し、起業や転職、学び直しが自由にできる社会をイメージしているようだ。
 高度成長を支えた終身雇用を前提とする単線型から、さまざまな働き方ができる複線型へと大きく転換させたいのだろう。小手先の改革では済まないだけに、どこまで本気で取り組むつもりか。単なる政権浮揚が目的ではないのか、疑問が残る。
 少子化による人口減で勤労世代の減少が今後も続く。解消するには、今は働いていない女性やシニア層の雇用などが欠かせない。定年になれば隠居するような生活は昔話になる。個々の生き方や人生観を左右し、負担や変化を迫るようなら、国民的な議論が求められる。
 教育無償化に反対する人はいないだろう。ただ、財源をどうするか大きな問題だ。幼児教育の無償化や大学授業料の負担軽減は、文部科学省の試算では4兆円を超す追加の財源が必要となる。政府は年末にかけ、「子ども保険」など財源確保策を含めて制度設計を進める方針だが、すんなりとはいくまい。
 政権の視線があくまでも経済成長に向いていることも気掛かりだ。「人づくり」という言葉自体、上から目線だろう。結果的に国民にとってもプラスになるかもしれないが、個々の幸せのため持てる能力や関心を伸ばすという考え方ではない。
 今は高齢者に手厚く給付している社会保障制度の見直しも、議論の対象となる。全ての世代向けに改める考えのようだが、仕組みを大掛かりに変えていくには相応の覚悟が不可欠だ。
 どんな社会を目指すのか、政府は分かりやすく示すべきである。私たち国民も、目標は妥当か実現は可能かなど、しっかり吟味しなければならない。

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