Home > 社説 > 地方紙 > 山陽新聞(岡山県) > 【山陽新聞】 教育無償化 現実的な財源論欠かせぬ
E235-SANYO

【山陽新聞】 教育無償化 現実的な財源論欠かせぬ

そう思わないそう思う (まだ投票していません)
Loading...

 安倍政権が打ち出した「人づくり革命」の具体化に向けた議論が始まった。柱となるのは、就学前の子どもや大学生らを含めた教育無償化だ。社会人が年齢に関係なく学び直せる仕組みづくりなどと合わせて、政府は来年6月をめどに基本構想を策定する。
 教育無償化が浮上した背景にあるのは、6人に1人の子どもが貧困世帯で暮らすなど格差が広がり、経済的理由で大学を諦めざるを得ない若者がいることだ。就職後も一般的に高校卒の方が低収入で、世代を超えて格差が引き継がれかねない問題もある。
 教育への公的支出が海外に比べて少ない現状も知られている。国内総生産(GDP)に占める教育機関への支出割合は、日本は経済協力開発機構(OECD)の比較可能な34カ国の中で最も低い。憲法は、能力に応じて国民が等しく教育を受ける権利をうたう。意欲ある若者が家庭環境に関わりなく十分に学べる環境づくりは本人にも社会にも極めて重要である。
 だが、実現が見通せているわけではない。最大のネックは巨額の財源だ。文部科学省によると、大学無償化に約3兆1千億円かかり、幼児教育なども合わせると4兆円を超す。自民党には「教育国債」発行で賄う案もあるが、危機的な状況にある国の借金をさらに膨らませ、次世代につけを回す手法に十分な理解は得られまい。
 幼児教育に関して注目を集めているのが、自民党の小泉進次郎衆院議員らが提言した「こども保険」だ。労使折半の厚生年金の保険料率を将来的に1%引き上げ、子ども1人当たり月2万5千円の児童手当を加算するという。現役世代と企業に薄く広く負担を求めることになる。ただ、子どもがいない人や子育てを終えた人からも保険料を取ることには異論もある。
 大学無償化の財源を巡っては、ここにきて「出世払い」案が浮上している。在学中は国が授業料を負担し、卒業後に返済してもらう。
 自民党の教育再生実行本部は、たたき台としてオーストラリアの制度を挙げる。卒業後に給料から天引きで払ってもらうものだが、年収が基準未満なら返済を免除され、返済割合は国の補助額の8割強という。免除の線引き次第では返済が低水準にとどまり、国に重い財政負担がのしかかることにもなりかねない。
 無償化とは別に、国は本年度、低所得世帯で学習意欲の高い学生向けに、返済不要の給付型奨学金を創設した。対象は1学年当たり約2万人となっているが、真に援助を必要としている若者を支えていくために、こうした仕組みをさらに広げていくことも検討すべきだろう。
 消費増税分の一部を無償化の財源とする案もある。負担を負う国民の納得が広く得られるよう、財源や対象について丁寧に議論を進めていくことが欠かせない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。