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【熊本日日新聞】 首相の解散意向 あまりに身勝手ではないか

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 なぜ今なのか、との疑問が拭えない。今年8月の内閣改造では「結果本位の仕事人内閣」を掲げたはずだ。まず国政に専念すべき時ではないか。
 安倍晋三首相が28日召集の臨時国会冒頭にも衆院を解散し、来月下旬に総選挙を実施する意向を固めたという。北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射を強行する緊張下での重大判断だ。首相は北朝鮮に対抗するため、強力な政権基盤を持つ必要性を訴える方針だが、こうした時期だからこそ、一国のリーダーとして「政治空白」をつくることは避けるべきだ。
 そもそも臨時国会は、学校法人「森友学園」や「加計学園」の真相解明のため野党が憲法に基づいて求めたものだ。自民党の憲法改正草案は、国会召集要求を「少数者の権利」として「要求から20日以内に召集」と明記している。にもかかわらず、約3カ月も拒み続けてきた経緯がある。
 首相が臨時国会冒頭での解散を決断すれば、国民が望む真相解明の機会が遠のくことになる。自らの主張さえも棚に上げた上、都合の悪い問題から逃げ、真実の隠蔽[いんぺい]を図っているのではと見られても仕方がない。
 首相が「電撃解散」に傾いた背景には、森友、加計学園問題で急落した内閣支持率が回復傾向に転じたことがある。臨時国会が始まれば野党が追及を強めるのは必至で、「国民の厳しい視線が再び政権に向き、下落するリスクがある」(自民党国対筋)との読みがあったのだろう。
 さらに野党第1党の民進党は、前原誠司代表ら新執行部が誕生したが、離党者が相次ぐなど混乱が収まっていない。世論の支持を集める小池百合子東京都知事の側近が年内立ち上げを進める国政政党の態勢が整わないうちに済ませたいとの思惑も透けて見える。
 首相は2014年11月、準備不足だった当時の民主党の虚を突いた形で電撃的な解散を行い、翌12月の総選挙で大勝した経緯がある。その時の成功体験が基になっているのだろう。
 北朝鮮問題が緊迫の度を増す中での解散は当然、批判を招く可能性がある。それでも首相周辺は「首相が『うまく対処できるのは自分だけだ』と訴えて対抗する」と意に介さない。国際情勢の緊迫化を利用するかのような、政権のなりふり構わない姿勢にはあきれてしまう。
 首相は「10月10日公示、22日投開票」「同17日公示、29日投開票」の2案を念頭に置いているもようだ。18日から22日までの訪米から帰国した後に北朝鮮情勢などを見て、最終判断する。
 現在の衆院議員の任期は来年12月半ばまでで、まだ1年2カ月以上残っている。「解散は首相の専権事項」と言われるが、党利党略が優先されていいはずがない。
 野党の混乱に乗じて、政権の維持を図ろうとする戦略には「大義」は見いだせない。あまりに身勝手で、解散権の乱用としか言いようがない。

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