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【京都新聞】 「出国税」構想  誰が恩恵を受けるのか

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 日本から出国する旅行者に課す「出国税」など、観光施策に充てる新たな財源の検討が始まった。
 安倍晋三政権が掲げる2020年に外国人旅行者を4千万人に増やす「観光立国」の実現に向け、訪日客に加え日本人からも徴収する方向だ。国民にとって負担は増しても直接のメリットは薄い。果たして理解は得られるのだろうか。
 観光庁によると、訪日客は昨年2400万人を突破し、その旅行消費額は3兆7千億円に達した。安倍政権は観光を成長戦略や地方創生の柱に据えるが、目標達成には海外での観光宣伝強化のほか、多言語表示や出入国管理システムの高度化といった受け入れ環境の整備が不可欠とされる。
 6月に閣議決定した「未来投資戦略」は、観光立国に向けた数値目標と併せ、「受益者の負担による方法により、観光施策に充てる財源を確保する」方針を明示。観光庁は有識者会議を設置して具体策の検討に着手、来月末にも使途や規模も含めた結論を出す。
 先週の初会合では、海外の事例を参考に討議した。徴収方法は絞り込まなかったが、日本人にも課して使途は観光施策に限定する方向で一致した、という。
 例えば、オーストラリアの出国税は出国する旅行者に60豪ドル(約5千円)を課税。韓国の出国納付金も似た制度で航空機利用なら1万ウォン(約千円)を徴収する。同様に日本も昨年1年間の訪日客と日本人の出国者計約4千万人を対象に、仮に1人千円の出国税を課せば約400億円の税収を確保できる。観光庁の本年度予算約210億円の倍近い額を見込める。
 しかし、新財源は受益者負担が原則である。税には租税条約などで「内外無差別」のルールがあるとはいえ、日本人にも課すのは訪日客の増加に向けた施策を拡充させる趣旨とも合致しない。取りやすいところから取るというのでは国民の納得を得るのは難しい。まずは恩恵を直接受けるホテルや観光業者などこそ「受益者」と捉えるべきであろう。
 日本の主要空港では既に国際線乗降客に空港使用料を課し、京都市の「宿泊税」などの動きもある。新たに出国税などを徴収すれば二重取りの批判は免れない。訪日客の伸びに水を差す恐れもある。
 消費意欲が旺盛な外国人観光客の取り込みは重要だが、観光立国を銘打った新財源が効果の薄い施策や公共事業に回されることは許されない。具体的な使途についても厳格な検討が欠かせない。

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