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【岩手日報】 首相の解散権 「意のまま」でいいのか

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 衆院の解散、総選挙は、もはや決定的なようだ。安倍晋三首相は週明け25日に記者会見を開き、28日召集の臨時国会冒頭で解散する意向を示す見通しだ。同時に争点に類する話もするという。
 首相不在で強まる解散風。その大義は論者によってさまざまに解釈される。常日ごろ常在戦場とされる国会議員にして、今回の解散には与野党問わず戸惑う向きが少なくないようだ。首相に近い筋からさえ疑問の声が上がる。一般国民は、なおさらだ。
 今の改造内閣が発足したのは8月3日。安倍首相は「結果本位の仕事人内閣だ」と胸を張ったものだ。一度も国会を経ず、各閣僚の所信すら満足に伝わっていないのに「結果」をどう判断するべきか。
 北朝鮮が挑発行動を繰り返すさなかでもある。安倍首相周辺の関与が疑われる森友学園や加計学園の問題で、世論調査は国民の大多数が納得していない現状を示す。野党が憲法に基づき要求していた臨時国会が、審議もせずに冒頭解散とあっては、国民の声にも憲法の要請にも背を向けていると言わざるを得ない。
 週明けには首相の口から大義が示されようが、衆参両院ともに与党が圧倒的多数を握る中で、流動化する野党勢力の足元を見透かすように解散に打って出るのは、政局的な意味は認めても極めて内向きな印象がある。首相の説明いかんでは、解散の是非そのものが争点になるだろう。
 衆院の解散権は首相の専権とされるが、憲法に明確な規定はない。解散に関する条文は二つ。衆院で内閣不信任となった場合に10日以内の衆院解散か内閣総辞職を定めた69条と、7条が定める天皇の国事行為の中の「衆議院を解散すること」という項目だ。
 天皇の国事行為は「内閣の助言と承認」によるから、内閣に権限がある−とするのが7条解散の解釈だ。内閣を主導するのは首相。実質的に、解散は首相の胸三寸ということになっている。
 司法は三権分立の建前から「権限の外」と憲法判断を回避。いわば消極的に認める立場だが、毎回600億円を超える国費と人員を投入して行われる衆院選が、首相の意のままに実施可能な今の仕組みには疑問が拭えない。
 日本が議院内閣制のモデルとする英国では、2011年の法改正で首相の解散権を制限。議会で3分の2以上の同意を得なければならなくなった。ドイツやフランスも解散権を制限するなど、先進各国が首相権限を厳格に縛る傾向にあるのは見逃せない。
 日本の衆院解散の仕組みは今のままでいいのか。安倍首相が好む「戦後レジーム(枠組み)からの脱却」は、この観点でも議論の余地がある。
 

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