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【産経新聞】 原発被災者訴訟 上級審の判断を聞きたい

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 東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発の事故の被災者が国と東電に損害賠償などを求めた訴訟で、福島地裁は「国は巨大津波の発生を予見でき、事故を回避できた」と指摘し、両者に賠償を命じた。
 約30件ある同種の集団訴訟の3件目の判決で、3月の前橋地裁は国と東電に、9月の千葉地裁は東電だけに賠償を命じていた。
 国について千葉地裁は「津波は予見できたが、事故を防げなかった可能性がある」として賠償責任を認めていなかった。
 国や東電と、原告側の主張は、いずれの訴訟でも大筋で変わらない。地裁ごとに裁判官の判断が割れ続ける現状は混乱を招き、被災者間の分断も生みかねない。
 一連の訴訟は今後、京都、東京、横浜、さいたま、大阪地裁などでもあり、東京高裁などによる上級審の判断がこれに続く。司法の揺らぎを収めるべく、上級審の判断を聞きたい。
 刑事裁判では東電の旧経営陣3人が業務上過失致死傷罪に問われ、東京地検は2度にわたり「事故の予見や回避は困難だった」と不起訴処分としたが、検察審査会によって強制起訴されている。
 検察当局が認めなかった予見可能性を裁判所が認めるという、いわば「ねじれ判断」である。
 民事、刑事で争われる「予見可能性」の大きな根拠とされてきたのは、平成14年7月に国の地震調査研究推進本部が策定した長期評価で「三陸沖北部から房総沖の日本海溝でマグニチュード(M)8クラスの津波地震が30年以内に20%程度の確率で発生する」と推定したことなどによる。
 国と東電は「長期評価は実証性を欠く仮説で、政府の中央防災会議でも採用していない」などと反論したが、全ての地裁で退けられている。福島地裁判決も「専門研究者の間で正当な見解であると是認されており信頼性を疑うべき事情は存在しない」と断じた。
 だが、実際の東日本大震災は、推定をはるかに上回るM9・0の巨大地震だった。
 M9のエネルギー量は、M8の約30倍に及ぶとされる。震災の死者・不明者は約1万8000人で、このうち9割以上が津波の犠牲となった。大津波が予見できたなら、この甚大な被災にも誰かが責任を負わなくてはならないのではないか。

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