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【信濃毎日新聞】 衆院選に問う 国と地方 対等な関係をどう築く

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 日本国憲法とともに地方自治が生まれて70年の節目に迎えた衆院選である。
 地方のことは地方が決める。憲法が言う「地方自治の本旨」は生かされているのか。安倍晋三政権の「地方創生」をそんな観点から問い直したい。
 旧憲法に地方自治の規定はなかった。もの言えぬ地方を従える中央集権体制のもとで国は暴走し、戦争に突き進んだ。
 その反省から、現憲法は第8章で地方自治を明文化した。行政権と立法権を持つ地方自治体が向き合うことで、国を抑制し、均衡を図る役割が期待された。
 ただ、戦後も「3割自治」の言葉が象徴するように憲法の理念から遠かった。
 これを転換したのが1999年成立の地方分権一括法だ。「上下・主従」だった国と地方の関係を「対等・協力」と位置付けた。国の仕事を地方自治体に下請けさせる機関委任事務は廃止された。
 
 
 <自主性の尊重は>
 だが、本当に対等な関係は築けているのか。安倍政権はむしろ中央集権化を志向しているように見える。その代表例が、第2次政権から掲げる看板政策、地方創生の手法だ。
 2014年11月施行の地方創生法は、人口減少対策の総合戦略作りを政府に義務付けた。地方は努力義務だ。
 人口減は多くの自治体が以前から最重要課題として独自に取り組んできた。それでも新たに戦略を作らなければ国の交付金がもらえない。自治体は従わざるを得なかった。
 地方の自主性が強調されてはいるものの、各種の交付金を出すかどうかは、自治体が挙げた事業を国が審査して決める。合格するよう自治体は国の顔色をうかがう。施策は横並びになりやすい。
 「地域消費喚起型」と名付けた交付金で国がプレミアム付き商品券を例示した。すると、全国のほとんどの自治体が取り入れたのが典型だ。
 学生の地方分散を促すため、政府が先月公表した「地方大学・地域産業創生」という新たな交付金も同様だ。来年度、産官学連携の事業を道府県などに挙げさせ、国の審査に通れば1件約10億円を交付する。
 既にバイオ医薬品や介護ロボットの研究・開発など国の意向を例示し、誘導している。産業の発展に直接寄与しない学問は軽んじられることにもなりかねない。
 地方創生の一環である「ふるさと納税」は、国と地方の財源配分の問題を映し出す。
 個人が選んだ自治体に寄付すると、2千円の自己負担を除いた金額が住民税や所得税から控除される制度だ。寄付をした自治体からの返礼品が2千円相当より高ければ寄付者は得をすることになる。
 
 
 <財源移譲なき競争>
 返礼品の競争で自治体同士が税を奪い合う構図だ。寄付を受けた額が控除額などを下回り、赤字になれば住民サービスの低下につながる恐れがある。
 国と地方の歳出比率は4対6なのに税源配分は6対4とされる。より多くの財源を国が握ったまま、自治体に競争を促す。
 「自助で稼ぐところは応援するし、そうでないところは応援しない」。山本幸三・前地方創生担当相の発言が国主導の姿勢をよく示している。
 今選挙で自民党は「地方が主役の『地方創生』の実現」を主張する。一方で、5年前に公表した憲法改正草案では、自治体が財産を管理し、行政を執行する権限があることを削除し、事務を処理する権限にとどめている。
 自治体の権限を弱めるようでは「地方が主役」にはなり得ないのではないか。
 これに対し、希望の党は憲法を改正して「分権」の考え方を明記するとしている。本来、今の憲法や地方自治法の理念が徹底されれば、分権は進むはずだ。一足飛びに改憲する必要があるのか。
 日本維新が掲げる道州制は、都道府県の廃止によってその仕事を担う市町村の合併をさらに進め、地方自治が衰退する危惧もある。
 
 
 <住民からの発想で>
 地方自治法は第1条で、自治体の施策の実施に当たり、自主性や自立性が十分に発揮されるよう国に求めている。
 「住民の発想を行政が支援するのが住民自治で、下からの自治でなければ民主国家はない」
 「田直し」「道直し」「げたばきヘルパー」など、住民主体の独自施策を打ち出した栄村の元村長、高橋彦芳さんの言葉だ。
 求められるのは国が上に立ち、地方を競わせることではなく、地方の自由な発想に委ねることではないか。財源や権限を地方にもっと移し、国と地方が本当に対等な関係を築くことが欠かせない。
 各党はその道筋こそ具体的に語ってほしい。 (10月12日)

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