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【高知新聞】 【2017衆院選 社会保障】国民本位の将来設計語れ

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 年金・医療から子育て支援まで、安定した社会保障制度の構築は国民が最重視する政策課題である。直近の世論調査でも3割近くが投票する際の判断項目に挙げ、群を抜く。
 安倍首相は、2019年10月に予定する消費税率の8%から10%への引き上げに伴う増収分の使途を、国の借金返済から教育無償化などへ変更する方針を「争点」に打ち出し、衆院解散に踏み切った。
 安倍政権は2回にわたって再増税を延期してきた。その果ての唐突な方針転換である。高齢者対策に偏りがちだった社会保障を「全世代型」へシフトするというが、党内議論も尽くされていない。
 民主党政権時代の2012年に自民、公明と3党で合意した「社会保障と税の一体改革」も「全世代型」を見据えて始まった。その後の政府議論も、高齢者らに応能負担を求めながら、給付を子育て支援に広げていく改革論に力点が置かれてきた。
 そうした社会保障の充実と持続性を担保するのが、将来にわたる財源確保であり、それを可能にする財政基盤の強化である。
 現計画は、10%への引き上げで見込む年5兆8千億円程度の増収のうち、1兆4500億円を子育て支援や医療、年金などに充て、残り4兆円余りを借金返済などへ配分する―との約束だった。社会保障改革と財政健全化との両立を描く。
 政府は18年度予算編成でも社会保障費の自然増を6300億円と見込み、医療や介護の負担増や給付カットで5千億円まで圧縮する。支払い能力のある高齢者に耐えてもらってのやりくりだ。
 安倍首相は借金返済を減らして2兆円を捻出し、新たに少子化対策に回すという。これにより、20年度の基礎的財政収支の黒字化達成は「困難になる」と認めながら、その先の財政再建への具体的計画は「今後」に見送る。将来世代へのつけ回しにも等しい。
 確かに、待機児童対策などは喫緊の課題だ。一方で、2025年には「団塊の世代」が75歳以上になり、高齢者の医療や介護の費用が急増する。加えて、受け皿となる現場には保育士や介護士の人手不足が難題として横たわる。予算投入だけでは解決しない課題だ。
 自民党に対抗する新党の希望の党や立憲民主党など野党勢は増税の凍結や中止を主張する。では、年間給付費が110兆円を優に超え、なお増大し続ける社会保障費の財源確保をどう描くのか。現実的な整合性を説くべきだ。
 各党は選挙のための思惑を排し、国民生活本位の制度設計を示さなければならない。そこでは、国民に痛みを強いる議論も避けられず、少子高齢化が進行する中では負担と給付の限界も見えてこよう。社会保障以外の歳出見直しや税制改革も含めた実効性のある提案が必要だ。政治の胆力と構想力が問われる。

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