Home > 社説 > ブロック紙 > 西日本新聞 > 【西日本新聞】 安倍自民勝利 民意を謙虚に受け止めよ
E060-NISHINIHON

【西日本新聞】 安倍自民勝利 民意を謙虚に受け止めよ

そう思わないそう思う (まだ投票していません)
Loading...

 政権継続の“勝ち名乗り”は受けても、胸は張れまい。
 横綱が堂々と正面から相手を受け止め、がっぷり四つに組んで寄り切った、というわけではない。
 猫だましのような奇襲に出た横綱に、怒った相手は大技で反撃しようとしたものの、体勢を崩して押し切られた-。
 第48回衆院選(定数465)は自民、公明の与党が制し、両党で定数の3分の2(310)超の議席数を維持した。安倍晋三首相は、自公連立を基盤に、長期政権への地歩を一段と固めた。
 今後は、少子高齢社会の克服に向けた「人づくり革命」や「全世代型社会保障」などを旗印に諸改革を進め、憲法改正への議論も加速させる構えだ。
 しかし、そこに“物言い”をつけたい国民も少なくなかろう。首相は民意の深層を見つめ、謙虚な政権運営に努めてほしい。
 ●見過ごせぬ「乖離」
 首相は旧民主党から政権を奪還した2012年12月の衆院選を皮切りに、衆参の国政選挙で5連勝を果たしたことになる。
 首相の経済政策「アベノミクス」は、株価の回復や企業の賃金・雇用環境の改善など一定の成果を上げている。社会保障、子育て、教育など幅広い分野で首相は改革案を示し、外交面でも北朝鮮、中国の脅威に対して米国との連携を軸にした国際包囲網の形成を主導するなど存在感を発揮している。
 それらが総体として政治のリーダーシップや安定感を醸し出し、与党優位の基調となった。その一方で、今回の衆院選は「安倍政治」への疑念がじわじわと膨らんでいる現実もあぶり出した。
 公示前後に報道各社が行った世論調査では、自民党の選挙情勢が堅調なのに内閣支持率は4割前後にとどまり、不支持率がそれを上回る-という傾向が表れた。
 首相は「森友・加計(かけ)学園」に絡む自らの疑惑を払拭(ふっしょく)し切れなかった。一内閣の判断で憲法解釈を変更した安全保障関連法の制定をはじめとする一連の国会軽視の姿勢は厳しい批判を浴び、首相の求心力には陰りも生じていた。
 突然の衆院解散は、そうした苦境の打開策であり、野党の低迷が続くうちに政権をリセットしようとする意図が透けて見えた。
 それでも自民が選挙戦を制した背景には野党側の混乱がある。小池百合子東京都知事による希望の党結成に端を発した民進党の分裂と再編劇である。反自民票は分散し、投票率も低調だった。それが相対的に自民に有利に働いた。民意と選挙結果の間には“乖離(かいり)”があることを見据えるべきだろう。
 ●進む「政治の劣化」
 党の理念や政策が生煮えのまま有権者受けを狙った演出やキャッチフレーズが先行する-。今回の衆院選ではそんな姿も目立った。いわば“政治の劣化”である。
 首相が訴えた「国難突破」もその一例だろう。少子高齢社会の克服や北朝鮮の脅威への対応は、今に始まった話ではない。
 「全世代型社会保障」に向け、消費税収の使途を変更するという公約は唐突だった。政策の大転換として与党内で深く議論されたのか。9条に自衛隊の存在を明記するなどの憲法改正案も、党内での議論が熟しているとは言えず、前のめりの印象が強い。
 野党側では、最大野党だった民進党が希望の党との合流に動いた。政権交代に向け「名を捨てて実を取る」という大義だった。
 元々保守色が強い小池氏との共闘には無理があり、民進党は自壊した。希望の党も「反自民」の姿勢を明示できず、伸び悩んだ。
 非合流組の枝野幸男氏が立ち上げた立憲民主党は「反自民」の受け皿としてリベラル路線を貫き、野党第1党に躍進した。党利党略にとらわれない政治姿勢が有権者に支持された結果であろう。
 総じてみれば、安倍政権がどこまで国民に信任されたのか。小選挙区制を軸にした現行の選挙制度の下では、民意と獲得議席数との間に“ずれ”も生じる。首相が今回の勝利におごり、独善的な政権運営を続けるようであれば、逆に民意の離反を招くだろう。
 長期政権は、国に「安定」をもたらしつつ、為政者の慢心や過信を生んでいく。主権者である私たちは、今回の選挙戦の実相を見つめ、むしろ政治への監視を強めていかなければならない。 →電子版1周年記念!1万円分賞品券やQUOカードが当たる!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。