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【河北新報】 所有者不明土地/歯止めかける総合的対策を

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 日本の、そして地域社会の将来に計り知れない「損失」を与えかねない問題である。
 持ち主が分からなくなっている土地が、増加していることだ。所有者が亡くなった後に資産価値が低く、売買の機会が少ない土地を中心に、相続登記が長年更新されてこなかったからである。
 増田寛也元総務相ら民間有識者でつくる研究会は先頃、推計を発表。所有者不明土地が2040年に今の1.8倍の約720万ヘクタール(北海道の約9割の広さ)に増える可能性があり、その間の経済的損失は計約6兆円に上るという。
 税収や街づくりをはじめ、影響は幅広い分野に及ぶ。持ち主が判然としない宅地、農地、林地などがこれ以上増えないよう、総合的な対策を早期に講じなければならない。
 具体的に、どんなマイナスの影響があるのか。
 まずは固定資産税の徴収がままならなくなる。関係者の同意が必要な公共事業では、所有者を特定する調査に多くの費用と手間・時間がかかる上、事業そのものの遅れや変更を余儀なくされかねない。
 そうした事例は、東日本大震災の復旧・復興事業で続出した。津波被災地の高台移転事業における移転先の変更や事業の遅滞といったケースであり、この問題を顕在化させる契機になった。
 悪影響は、それだけにとどまらない。所有者が不明ということは、土地の管理が行われていないということだ。
 街の中の宅地であれば、景観や治安の悪化につながる恐れがある。農地や林地なら耕作もされず荒廃し、洪水や土砂災害を防ぐ機能が低下。災害を甚大化させかねない。
 今後、持ち主不明地が一層拡大すると予想されるのは「人口減の加速化で、宅地を含めて土地を利用する目的がなくなる」(増田氏)からだ。
 特に地方で深刻化する。相続人である地方出身の都市住民にとって田舎の土地は利用の見込みがない。買い手もつかず、手放そうにも行き場がない。そんな土地が増える。早急に手を打つ必要がある。
 政府もやっと対策づくりに乗り出した。所有者不明地に利用権を設定し、公共性の高い事業に活用する仕組みを検討する。相続登記の促進に力を入れるのは当然のことだ。
 登記は権利の保全が目的。義務ではなく任意であり、名義書き換えの手続きが面倒で税負担もあって費用がかさむことも敬遠される要因だ。義務化を含めて、制度を見直す必要がある。手続きの簡素化や税の軽減にも努めたい。
 同時に重要なのは、人口減に伴い増加が想定される、利用見込みがない土地の対策。その受け皿づくりである。
 放置されれば、物理的な荒廃と共に、相続未登記による権利関係の複雑化がさらに進む。そうした土地について利活用を含め、いかに管理するか。公有化も選択肢に、受け皿整備に知恵を絞りたい。

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