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【中国新聞】 パラダイス文書 税逃れ、国際連携で防げ

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 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手し、世界一斉に報じられた「パラダイス文書」が波紋を広げている。
 タックスヘイブン(租税回避地)を利用し、一握りの資産家らが課税を逃れ、巨万の富を築く—。そのからくりは、昨年報じられたパナマ文書で暴露されていたが、さらに世界の経済や政権の中枢にいる人物らの関与も明らかになったからだ。
 パナマ文書の発覚をきっかけに世界中がこの税逃れを問題視し、各国で対策強化が促されてきた。しかし法の網をかいくぐって不公正な蓄財を続ける特権階級の実態に、国際社会は一層厳しい目を注がねばならない。
 報道では、名だたる面々が挙がっている。例えばカナダのトルドー首相は、盟友の課税逃れが疑われている。富裕層と一般市民との格差是正や、タックスヘイブンなどのオフショア市場対策を訴えてきた首相だけに責任は免れない。
 鳩山由紀夫元首相が、英領バミューダ諸島に設立された香港系企業の名誉会長に就任していたことも分かった。鳩山氏は、名義貸しで報酬は適正に税務申告したとしている。
 問題は、違法かどうかではなく、一部の人たちが違法にならないよう租税を「回避」することだろう。英領バミューダ諸島などのタックスヘイブンは、外国企業を呼び込むのを狙いに設けられた税制上の優遇措置で、それ自体は違法ではない。だが秘密保持が徹底されているため、課税逃れが目的の会計操作の温床と批判されてきた。
 一方、一般市民には厳しい税負担が求められ、苦しむ人たちも少なくない。国際世論の底流にあるのは、大多数の一般市民と一部の富裕層との間に広がる格差に対する憤りだろう。
 さらに、今回のパラダイス文書に関する報道で注目したいのが、米国とロシアの政権中枢が地下水脈で通じていた疑惑だ。
 ロス米商務長官がタックスヘイブンにある法人を介してロシアのプーチン大統領に近い石油化学大手との取引で利益を得ていたことが明らかになった。会社の主要株主にはプーチン氏の娘婿や米国の制裁対象者の実業家もいる。
 ロス氏はトランプ米大統領とは長年の盟友で、経済・通商政策を主導する政権の中枢にいる人物だ。政策判断に影響力を持つ立場だから「利益相反」だと批判されても当然ではないか。もし自らの利益を重視し、通商外交がゆがめられていたとしたら、とんでもないことだ。
 秘密が守られるタックスヘイブンの仕組みは、テロや犯罪資金の洗浄に使われているともいう。先月には、地中海のマルタでパナマ文書報道に関わってきた記者が殺害される事件も起きた。この問題を巡る闇は、それほど深いのではないか。
 国際社会も手をこまねいてきたわけではない。20カ国・地域(G20)首脳会談などでも対策は話し合われ、主要国間で税務や金融口座情報の交換を進めている。経済協力開発機構(OECD)は、非協力的な国や地域のリストを作成している。6月には、外国子会社に利益を移して税逃れすることを防ぐ条約に76カ国・地域が署名した。
 そうした動きに実効性を持たせるためにも、一丸となって取り組みを急ぐべきだ。

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