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【中国新聞】 介護にも外国人実習生 待遇の改善欠かせない

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 人手不足が深刻な介護現場から歓迎の声が上がっている。外国人が知識や技術を習得して自国で生かす外国人技能実習制度の理念を定めた「適正化法」が今月施行され、介護職が制度の対象に加えられたからだ。
 ただ、実習生の違法な労働実態は従来指摘されている。どこまで解消されるか。不安を抱えたままの船出といえそうだ。
 技能実習制度は1993年に導入された。農業と漁業に加え、機械加工や自動車整備など計70を超す職種が対象だ。6月末時点で、ベトナムや中国などから来た約25万人が全国で働いている。6年前に比べ、ほぼ倍増したのは、少子高齢化が急速に進み、働き手となる15〜64歳の生産年齢人口が減る中、ニーズの高さの証しだろう。
 特に広島県は愛知県に続き全国で2番目に多い約1万2千人がいる(昨年10月末現在)。小規模事業所などの人手不足をカバーしているようだ。
 介護職は、団塊の世代が全て75歳以上になる2025年には約38万人分が不足すると推計されている。外国人実習生への期待が現場で高まっているのは、当然かもしれない。
 ただ介護は利用者や家族とのコミュニケーションが欠かせない。一定レベルの語学力を条件にするが、「働く上での最低レベルにすぎず、介護の質保証には不安が残る」などサービス低下を懸念する声も聞かれる。
 制度が抱える問題点も、13年に江田島市のカキ養殖加工会社で起きた実習生による殺傷事件をきっかけに明らかになった。全ての現場に当てはまるわけではないが、実習生を「安価な労働力」として扱い、賃金未払いや長時間労働の強制といった違法行為や、パスポート取り上げなどの人権侵害が横行するケースもある。そんな実態と途上国の人材育成を通した国際貢献という目的との乖離(かいり)は甚だしい。
 厚生労働省によると、労働基準関係法令違反は昨年4004件に上った。監督指導を実施した6千近い事業所の7割を超す。重大・悪質な法令違反で送検したケースは40件あった。放置してはおけまい。
 法律に、人権侵害への罰則を設け、監督を強化する規定を盛り込んだ。優良な受け入れ先は最長の実習期間を従来の3年から5年に延長できるようにした。問題は、実効性のあるチェックができるかどうかだろう。
 今まで、厚労省から委託された民間機関が巡回指導をしていたが、法的な権限はなく、事態の改善には限界があった。今後は、認可法人「外国人技能実習機構」を新設し、そこが企業などが作る実習生ごとの計画をチェックして実地検査も行う。計画が守られていなければ、受け入れ許可の取り消しもできるようになった。
 一歩前進ではある。ただ、不正防止策を事業者に徹底させながら、さらに厳しい監視の目を向け続けなければなるまい。
 もちろん、日本人であれ外国人であれ、介護職の待遇改善も忘れてはならない。賃金が低く仕事は過酷という労働環境を改善しないと、きつい職種は実習生をはじめ外国人任せといった風潮を助長しかねない。現場の努力だけでは不可能だろう。国を挙げて、外国人を受け入れ日本で共生できる環境づくりを進めるきっかけにしたい。

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