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【朝日新聞】 出国税 あまりに安直で拙速だ

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 疑問が尽きない新税の案である。必要性がはっきりしない。税金の無駄遣いになる懸念も拭えない。検討期間はわずか2カ月。取りやすいところから取るという安直な発想ではないか。
 日本から海外に向かう人に課す「出国税」の新設を、観光庁の有識者会議が提言した。
 外国人か日本人かを問わず、1人当たり千円以内の額を徴収する案だ。最近の出国実績に当てはめると、千円なら税収は年に約400億円になる。観光庁予算の2倍で、急増する訪日客をさらに呼び込むための観光振興策に充てるという。
 だが、議論は生煮えだ。
 どんな施策にどれほどの財源がさらに必要なのか。複数の省庁にまたがる既存の観光関連事業をはじめ、予算を広く見直し、効果が乏しいものを削って財源をつくることが先ではないか。訪日客対策が主眼なのに、なぜ日本人旅行者にも負担させるのか……。
 説得力のある説明はなされていない。関係業界からは、訪日旅行や日本人の海外旅行に水を差すことを心配する声も出ている。政府は、新税の必要性をはじめ、さまざまな疑問に答えなければならない。
 最大の問題は、無駄遣いを防ぐ手立てが見えないことだ。
 観光庁は、使い道を観光振興に限るよう法律などに明記する考えだ。だが、特定財源のような手法は負担と受益の関係が見えやすい半面、特定省庁の既得権益となり、無駄な予算を生みやすいという弊害がある。
 想定する使途は、地方のPR活動やITを使った情報発信の支援、空港の出入国体制の整備など幅広い。費用対効果を検証して使い方を見直すなど、無駄遣いを防ぐための具体的な仕組み作りはこれからだという。
 話の進め方もおかしい。
 有識者会議は非公開で、審議内容は配布資料や報道関係者への事後説明で概要がわかる程度だ。千円以内とする徴収額については、会議を開かず、観光庁が委員らと水面下で調整して固めた。こんな透明性を欠くやり方で、幅広い理解を得られるだろうか。
 新税が浮上した背景には、訪日観光を経済成長のエンジンにしたい首相官邸の意向があるようだ。今後、与党が12月にまとめる税制改正大綱で道筋をつけ、19年度からの導入をめざしている。
 税制は民主主義の根幹にかかわる。開かれた場でじっくり議論し、丁寧に説明することが不可欠だ。「結論ありき」は許されない。

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