Home > 社説 > ブロック紙 > 河北新報 > 【河北新報】 被災地ホストタウン/「復興五輪」問い直す契機に
E050-KAHOKU

【河北新報】 被災地ホストタウン/「復興五輪」問い直す契機に

そう思わないそう思う (まだ投票していません)
Loading...

 東日本大震災の被災地と、2020年東京五輪・パラリンピックとの距離がなかなか縮まらない。
 五輪に向け、被災自治体の国際交流を支援する国の事業「復興『ありがとう』ホストタウン」への応募が10月31日現在、岩手、宮城、福島の被災3県で計11市村(岩手5、宮城2、福島4)にとどまる。
 震災の際、支援してくれた海外の国の人たちに復興したまちの姿を見てもらい、幅広い交流活動を行うという。
 融和と連帯は五輪の重要な精神でもある。だが、復興途上の被災地が抱える厳しい現実と、かみ合わない。
 政府の東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局は、低調の原因をしっかり見極め、被災地の実情に即した中身の濃い事業として組み立て直すべきだ。
 今回、事務局は全国の自治体を対象にした従来のホストタウン事業とは別に、「被災地特化」の事業を新設。要件を緩和するなどして3県の自治体が取り組みやすくした。
 事業の発表は今年9月半ば。3県ごとに開いた説明会で応募を始め、10月末で締め切った。衆院選のさなかの大慌ての作業だったと分かる。
 3年後の本番に向け、早く準備を整えたい意図だったのかもしれないが、拙速は否めない。結果として参加11市村ではいかにも寂しい。募集を打ち切らず継続するという。
 不参加自治体では「応援職員の手を借りているのに(この事業のために)新たな人手は割けない」「復興自体がこれから」「優先順位を考えると難しい」などと困難さを訴える声が多い。
 こうした実情を事務局はどこまで把握していたのか。自治体側とのコミュニケーションは十分取れていたのだろうか。甚だ疑問だ。
 震災時に海外から支援の申し出があったのは、163カ国・地域と43の国際機関。加えると、東京五輪の参加見込み国数とほぼ同数になる。
 世界中から差し伸べられた善意はいくら感謝してもし切れない。各自治体が機会を捉えて謝意を伝えたり交流したりするのは当然だろう。
 しかし、それが東京五輪のタイミングでなければならない理由はないはずだ。
 それぞれのまちのペースに合わせ、将来にわたって長続きする交流の枠組みを国は考えてほしい。被災地の意に沿い、負担軽減や人材派遣など支援の充実も不可欠だ。
 招致活動の段階から「復興五輪」という言葉が希望の旗印のようにして登場し、被災者の頭越しに使われてきた。地元関係者の中には「被災地が利用されていると感じる」といぶかる人もいる。
 幸いにも、岩手県出身の鈴木俊一五輪相(岩手2区)が指揮を執る。被災地は五輪とどう向き合うべきかを真剣に議論すべきだ。スローガンではない「復興五輪」の内実を確かめたい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。