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【中国新聞】 株価上昇と日銀政策 異次元緩和、手じまいを

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 東京株式市場が26年ぶりの高値水準で推移している。バブル後最高値を先日記録した日経平均株価はきのう乱高下しながら、終値は2万2千円台を保った。活況の一要因に挙げられるのは、海外経済の持ち直しと日本企業の収益改善である。
 上場企業の9月期決算は絶好調で、人件費が高騰している中国によるロボットの購入を「爆買い」と評するなど景気のいい言葉が飛び交っているという。庶民は実感しにくいが、景気拡大もその長さに限れば、戦後2番目に数えられるそうだ。
 1989年に3万9千円に迫った株価はバブル崩壊で一時7千円を割り込んだ。現状まで持ち直すのに四半世紀かかった。バブル崩壊という負の遺産の大きさをあらためて実感させられる。金融政策の失敗が招いた面も否めないだけに、その教訓を生かすべきである。
 株価上昇をアベノミクスの成果だと政府・与党は誇りたいのだろう。しかし慢心や過信は禁物だ。今の値動きは必ずしも実体経済の全てを映し出しているわけではないからだ。
 「異次元」をうたう日銀の金融緩和策がつくり出した「官製相場」の色合いが濃い。その手段の一つが日本株の上場投資信託(ETF)買い入れである。
 買い入れは年6兆円に上り、累積16兆円超のETF購入で株価が2千〜3千円押し上げられたとの試算もある。もちろん誰の目にも明らかなようにいつまでも続けられる措置ではない。いずれ日銀が売却する際、株式相場への影響は避けられない。
 別のリスクも生まれている。今や売買シェアの3分の2を占める外国人投資家は北朝鮮や中東情勢次第では一気に手を引き大暴落を招く危機をはらむ。神戸製鋼所のデータ改ざんや日産自動車の無資格検査など、ものづくり立国日本への信頼を揺るがす事態も起き、先行きは不透明と言わざるを得ない。
 相場の過熱感やバブル再来を危惧する声が出始めた今だからこそ日銀は「決断」すべきだ。約4年にわたる異次元緩和の「出口戦略」のことである。
 株価は市場原理に委ねるのが筋である。また日銀が間接的に大株主になる企業が増え、図らずも経営監視と企業統治が後退することは避けねばならない。
 手じまいすべき異次元緩和は国債購入についても言える。日銀の総資産は直近515兆円と、名目国内総生産(GDP)536兆円とほぼ同規模に達し限界が近い。緩和策がもたらした低金利環境で政府の借金抑制への意識を低下させ、財政規律を乱したとの批判も根強い。
 しかし日銀が先月末下した決断は、緩和策の維持だった。達成のめどが立たない「物価上昇率2%」にこだわっているのだろうか。それとも政府の意向を忖度(そんたく)したのだろうか。
 日銀が考えるべきは将来に禍根を残さないことと、本来「通貨・物価の番人」である中央銀行の責務だ。黒田東彦(はるひこ)総裁には日ごろ自負する国際派の視点を求めたい。欧米諸国はリーマン・ショックから10年が迫り、金融政策を危機対応型から「平時」へ戻す動きを見せている。
 日銀が出口戦略を探るにしても入念な準備と丁寧な説明が欠かせない。ただ機を逃して出口を見失えばバブル後と同じ深い迷宮に入り込みかねない。

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