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【中日新聞】 TPP11合意 見えない新・貿易秩序

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 アジア太平洋の貿易体制づくりは米国抜きの環太平洋連携協定(TPP)が大筋合意したが、いくつもの協定づくりが競合し、むしろ混迷の度を深めている。その背景をしっかり見つめる必要がある。
 トランプ氏の米大統領当選から一年。初めてのアジア歴訪と一連の国際会議で、地域の新たな貿易投資の秩序、体制づくりは目まぐるしいほどの駆け引きが繰り広げられた。
 多国間の協定づくりでは、米国離脱後のTPP11は日本の主導で何とか大筋合意にこぎ着けた。一方、TPPに対抗して中国が主導する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は年内合意を断念。TPPの拡大を目指すアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)は見通しが立たない状況だ。
 新たな貿易秩序づくりに最も影響力のある米国は、トランプ大統領が多国間の協定づくりを否定し、米国に有利な二国間交渉に取り組む姿勢を一段と明確にして混乱に拍車をかけている。
 「自由で開放的、相互に利益を享受し、経済発展の土台となる貿易体制をつくる」という目標に近づくどころか、自国や自国が加わるグループの利益と主導権争いがあらわになった一週間といえる。
 混迷の背景には二つの対立、分断があるのだろう。
 一つは、くり返し指摘されるようにグローバリズムや自由貿易を推進しようとする力と、弱肉強食の負の側面が富の格差を生む原因とみて自由貿易にブレーキをかけようとする力との対立がある。
 米国でトランプ大統領の支持層が求める自国第一主義は保護主義につながるが、裏を返すとパラダイス文書が暴くように、脱税や違法スレスレの節税などで富を蓄積する既得権層への厳しい批判の目がある。
 もう一つは民主主義や人権、自由といった価値観を共有しないまま、自国主導の貿易秩序づくりを進めようとする中国の台頭がある。TPPはその中国へのけん制、対抗策として米国が日本とともに取り組んだが、トランプ政権になって離脱した。
 世界貿易機関(WTO)の新たな交渉も行き詰まっており、貿易秩序を巡る混迷はまだまだ続くとみられる。
 トランプ大統領の米国と巨大市場の中国の間で日本の立ち位置は難しいが、例えば自由や人権の強化と国内の経済格差解消にしっかり取り組むことが、分断を避ける役割につながるのではないか。  

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