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【朝日新聞】 米アジア政策 ここでも自国中心か

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 トランプ米大統領が10日にわたる初のアジア歴訪を終えた。
 目立ったのは、やはり「自国第一主義」だった。アジア太平洋地域の安定と繁栄のため、どう包括的な秩序づくりにかかわるのか。その決意や責任感が見えなかったのは残念である。
 ベトナムで演説したトランプ氏は「自由で開かれたインド太平洋」構想を掲げ、地域に関与していく方針はみせた。
 しかし、大半は経済問題にあてられ、安全保障にはほとんど触れなかった。中国の強引な海洋進出への言及もなかった。
 ベトナム首脳との会談では、中国を念頭に「仲裁や仲介ができるなら、知らせてほしい」と持ちかけた。当事者であることを忘れたような発言である。
 米国の重みが目減りし、中国への配慮が強まる。その流れは東南アジア諸国連合(ASEAN)の会合にも表れ、南シナ海問題の議論は低調だった。
 各国は先行きの不透明感を抱いているだろう。アジアは世界経済の牽引(けんいん)役といわれながらも、まだ政治的に安定しない国が多い。その地域に米国がどう臨むのか、はっきりとした指針が見えない。
 オバマ政権は米国を「太平洋国家」と位置づけ、アジア重視を宣言した。外交、軍事、経済の重心を欧州・中東などの大西洋から移す方針を示した。
 重視したのは多国間の枠組みだった。外交や安全保障ではASEANとの連携強化であり、経済では環太平洋経済連携協定(TPP)だった。
 しかしトランプ氏はTPPを離脱したまま、アジアの経済統合の動きに関心を示さない。今回の歴訪では「私は常に米国を最優先する」とし、二国間交渉を重んじる考えを力説した。
 実際、いくつかの会談では北朝鮮など地域問題への取り組みより、巨額の商談といった「成果」が強調された。
 目に見える利益は、米国内で支持を得やすい。だが、地域の基盤となるべき規範づくりなどの責務を米国が怠れば、アジアの未来は不確実さを増す。
 米外交のもう一つの柱だった自由や法の支配などの理念も、置き去りにされたのは深刻な問題だ。中国やフィリピンなどの民主化や人権について、トランプ氏は素通りした。
 「インド太平洋」は本来、価値観を共有する国々の連携を強めるものだろう。その構想を共に掲げる日本政府は、トランプ政権に粘りづよく説くべきだ。理念に基づく多国間の協調枠組みづくりこそ、アジア太平洋の持続的な発展の道だ、と。

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