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【読売新聞】 「出国税」 結論ありきでは理解得られぬ

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 新たな税負担を求めるためには、丁寧で開かれた議論が欠かせない。拙速は排すべきだ。
 観光庁の有識者会議が日本からの出国者に課す新税「出国税」を提言した。
 日本人を含め、航空券代への上乗せなどにより、1回1人1000円以内を徴収する。通称は「観光促進税」などとする方向だ。
 訪日外国人の受け入れ体制整備の財源にする。「観光立国」を成長戦略の柱に据える政府の意向が反映されていると言えよう。
 自民党税制調査会の議論を経て、与党税制改正大綱に盛り込まれる見通しだ。政府は来年の通常国会に関連法案を提出し、2019年の導入を目指す。
 今年の訪日客は、過去最高だった昨年の2404万人を早くも上回った。外国人に読めない案内表示や、貧弱なインターネット環境、有名観光地の混雑などの問題点が指摘されている。
 20年の東京五輪を控えて、観光政策を再検討する時期であることは間違いない。
 有識者会議は、9月中旬から非公開で6回開かれた。提言は、新たな施策の内容や費用の積算を具体的に示しておらず、議論が深まったとは言えない。
 国税で恒久的な税目が新設されたのは、1992年の地価税が最後だ。新税ともなれば、目的と使い道、負担の程度と影響などについて十分に検討が要る。その上で、国民への説明を尽くさなければ、幅広い理解は得られまい。
 税額の根拠も明確ではない。
 昨年の訪日客と日本人出国者は計4100万人だった。1回1000円なら年410億円の税収になる。16年度の当初と補正を合わせた観光庁予算に匹敵する。
 訪日客が増えれば、それだけ税収も増加する。財源を使い切ることが政策展開の前提になっていけば、バラマキに陥らないか。
 観光振興に関わる施策は多くの省庁、自治体にまたがる。既存の観光予算を精査し、重複や無駄を省いた上で、新たな必要額を見積もるのが筋だろう。
 出国者の約4割を占める日本人に対する課税の是非も、慎重に考えねばならない。
 国際的な課税ルールでは、自国民と外国人を区別できない。観光庁は、そう説明している。
 米国は税でなく、渡航認証の手数料として、訪米外国人から観光PR財源を徴収している。
 選択肢の利点と欠点を比較し、わかりやすく示す。国民の納得を得るために大切な過程だ。

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