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【福島民報】 【中山間対策】被災地の挑戦

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 双葉郡の川内、葛尾両村で地域づくりに向けた新たな事業がそれぞれ動きだした。川内村ではワイン醸造用のブドウ作りが本格化し、葛尾村では自転車の本格的なロードレース大会が開催された。2つの事業に共通するのは「不利」な環境を逆手にとって新たな価値を生み出そうとしている点だ。
 川内村の醸造用ブドウ畑は役場から10キロ余り離れた田村市と接する山腹に広がっている。山間高冷という厳しい環境を踏まえ、畜産・酪農の振興を目指して開拓された広大な牧草地だったが、東京電力福島第一原発事故で壊滅的な打撃を受けた。専門家団体による復興支援をきっかけに村や住民が加わってブドウの試験栽培が始まり、適地と分かった。現在、栽培面積は3ヘクタールに広がっている。来年には試験醸造に入る計画だ。
 葛尾村のロードレース大会は公道を使って開かれた。村内の道路は大小の起伏とカーブが目立ち、交通の難所と言われる箇所も少なくない。ところが、交通量が少ないこともあり、一周約30キロ、最大標高差415メートルという全国でも屈指の距離と難しさを持つコース設定が可能になった。こちらも復興支援に入った企業と村などが事業化した。参加者の7割は県外の選手で、来年以降も継続する予定となっている。
 川内、葛尾両村は阿武隈山地のど真ん中に位置する典型的な中山間地域だ。一般的に中山間地域は何をするにも困難を伴うため条件不利地域とも言われる。生活基盤の維持、産業振興、観光誘客…。課題は山積し、人口減と少子高齢化が追い打ちをかける。その最前線にある両村での取り組みは、「不利」と見られている環境も、視点を変えれば地域活性化の有効な資源になりうることを教えてくれる。
 「コメや野菜の生産は難しくても、ブドウ栽培には最適な土地」や「ドライバーの評判は良くないが、自転車競技には最高の道路」といった「財産」を増やしていくことで新たな産業を興し、人を呼び込むための発想も広がる。現に素晴らしい眺望を兼ね備えたブドウ畑は観光地としても魅力的だし、全国から訪れる自転車選手を農家などで受け入れる態勢を整えれば、民泊の振興と交流人口の拡大にもつながるのではないか。
 県土の8割は中山間地域であり、59市町村全てが多かれ少なかれ、活性化に頭を痛めている。東日本大震災と原発事故の被災地から始まった新たな挑戦を国や県も地域創生のモデルとして後押しすべきだ。(早川正也)

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