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【中国新聞】 TPP新協定 立ち止まって考え直せ

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 環太平洋連携協定(TPP)に参加する日本など11カ国の閣僚会合が、米国離脱後の新協定の内容に「大筋合意」したと発表した。
 英文の閣僚声明は、米国も含めた2015年の「大筋合意」の時とは異なり、「核となる項目について合意」との表現にとどまっている。本当に大筋合意と言えるのか、疑問が残る。
 新協定は日本政府が主導した。交渉事だけに、スピード感は求められよう。だが国会での具体的な交渉報告や関税撤廃に伴う国内農家への影響などの情報開示もしていない。なぜそんなに急ぐのか。合意ありきで国民の暮らしをないがしろにするのなら、本末転倒である。
 今回の閣僚会合では、カナダが土壇場で異論を唱えるなど足並みの乱れも浮き彫りになった。日本は国会審議を経て、早期発効を目指している。しかし今後11カ国が結束して最終合意できるのか先行きは不透明だ。このまま突き進んでいいのだろうか。この際、立ち止まって考え直すのが筋ではないか。
 何より米国がTPPの枠組みに復帰する見通しは立っていない。にもかかわらず新協定が、将来の米国復帰を前提としているのは問題だ。
 先月末から今月初旬にかけ、日本で開かれた首席交渉官会合で、各国が新協定で凍結を要望した項目数は、米国の意向で盛り込まれたものを中心に当初50を超えていた。米国に譲歩を強いられてきた参加国の不満の表れと言えよう。
 日本政府はその凍結対象を率先して20項目に絞り、「大筋合意」に突き進んだ。その拙速ぶりには、カナダでなくとも首をかしげざるを得ない。
 新協定が、元の協定から凍結したのは、医薬品のデータ保護期間などのルールの分野だけだ。関税分野の凍結・修正はしないという。
 焦点となっている乳製品などの低関税輸入枠も、米国が復帰する前提で元の協定のまま維持される。米国がこのまま参加しなければ、その枠がオーストラリアやニュージーランドなどの国に使われるだけだ。
 日本政府は11カ国が結束すれば、保護主義傾向を強める米国も貿易上の不利を感じ、TPPに復帰する可能性があると見ているようだ。新協定を日米自由貿易協定(FTA)への防波堤にしたい考えなのだろう。
 だが先の日米首脳会談で、トランプ米大統領に戦闘機を売り付けられた力関係を見ても、そう簡単に防波堤が築けるとは到底思えない。
 しかもトランプ氏は重ねて復帰を否定している。このままでは新協定でオーストラリアなどに与えた以上の低関税輸入枠をよこせと、FTA要求が強まるのが目に見えるようだ。
 関税が下がれば輸入食品が安く消費者に届く。日本の車など工業製品の輸出額が増すといったメリットもあろう。でも異なる産業を同等には語れまい。
 とりわけ気になるのが中国地方の小規模農家である。政府は第1次産業を海外市場での「競争力強化」「もうかる農業」といった言葉で成長戦略に位置付ける。だが中山間地域には当てはまらないのではないか。
 新協定については、情報開示や説明が先だ。国民を巻き込み議論を深めることが必要だ。

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