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【京都新聞】 ASEAN会議  中国への傾斜に危惧も

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 対立より実利を優先し、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の中国への傾斜が強まった。そんな印象だ。
 フィリピンで開かれたASEANと日米中ロなどの首脳会議は、核・ミサイル開発を進める北朝鮮を非難する一方、中国が昨年7月の仲裁裁判所の判決を無視して軍事拠点化を進める南シナ海の問題では強いメッセージを発しなかった。
 紛争防止へ「行動規範」の策定を関係国で始めるというが、中国主導で法的拘束力のない内容になる可能性が指摘される。巨額の経済支援をてこに、領有権を争うフィリピンなどを含めたASEANの取り込みを図る-そんな中国の周到な戦略が今回も際立った。
 むろん、互いに実利を前面にして対立を深めないのは外交上の知恵ではある。日本も、北朝鮮問題や経済協力を念頭に対中関係の改善に動いている。
 ただ、覇権主義的な振る舞いをこのまま中国が強めることにはASEANの中にも危惧(きぐ)があるはずだ。とりわけ、長くアジア太平洋地域に強い影響力を及ぼしてきた米国に対しては、暗に歯止め役を期待する国もあろう。
 だが今回、アジアを歴訪したトランプ米大統領を、各国はどう見ただろうか。
 トランプ氏はベトナムで、大統領就任後初めて包括的なアジア政策に関する演説を行い、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋戦略」を打ち出した。名指しはしないものの、巨大経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国の軍事的・経済的な権益拡大をけん制するものといえる。
 だが、肝心の海洋安全保障の具体像ははっきりせず、むしろ通商分野での米国との2国間交渉を通じて地域の繁栄と安定を目指す姿勢を印象づけた。環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を正当化するようにも受け取れる。
 「米国第一」の政権が、本気でアジア重視の政策を進めるのか。もともとインド太平洋戦略は安倍晋三首相が提唱した構想だけに、米国が主体的に、責任をもってこの地域に関与する姿勢は、いまだ見えないと言わざるを得ない。
 ASEANは政治体制や経済の発展度、文化の異なる国々だ。民主化の道半ばの国もある。一党支配体制の中国との関係を深める中で、民主化が滞ることはないか。
 法の支配や人権尊重の価値観を共有し、多国間協調で地域の安定を図る。日本はそれをトランプ氏に粘り強く説かねばならない。

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