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【岩手日報】 中長期の心のケア 東日本の創意を熊本へ

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 崩落した南阿蘇村の阿蘇大橋の手前に立ち、犠牲になった大学生の冥福を祈る。大地震から1年半に際して訪れた熊本県では、その爪痕が中山間地に色濃く残っていた。
 都市部の熊本市内は活気に満ち、災害前の日常を取り戻したかのように見える。しかし、恒久住宅の確保が進まず、仮設住宅退去後の生活再建の展望が開けない被災者も多いという。
 県の1年半時点のまとめによると、公費解体申請があった建物のうち、9割近くの約3万1千棟が完了。がれきなど災害廃棄物も8割以上を処理した。地震・津波・原発事故の東日本大震災と比べれば、復旧の歩みは早い。
 ただ、災害関連死は200人近くに上り、直接死の約4倍。約4万5千人が仮設住宅などでの生活を強いられる中、仮住まいの長期化に伴う心身の疲弊が懸念される。
 災害は、高齢化や生活困窮など、もともと地域が抱えていた課題を深刻化させる。かつ、時間の経過に伴い、悲しみや苦しみは見えづらくなっていく。本県の被災地が直面している事態が、熊本でも起きつつあるのではないか。
 南阿蘇村の若手陶芸家北里かおりさんは、自らが被災者でありつつ、村の集落支援員として奔走。今年2月には、陸前高田市や宮城県気仙沼市などを訪問した。
 「元に戻るのが難しいのなら、新しい生き方を模索していく」「失敗に学んでほしい」−。東日本や阪神大震災被災地の「先輩」たちの言葉を胸に、被災者支援に励む。
 熊本地震被災者の心身を長期的に支える上で、過去の大災害の経験がヒントになる。東日本の苦闘の日々が生きることだろう。
 今月、大船渡市で開かれた心のケアシンポジウム(大船渡保健所主催)では、兵庫県こころのケアセンター長の加藤寛医師を助言者に迎え、災害公営住宅入居者のコミュニティーづくりや住民主体の傾聴ボランティア活動など、震災以来の気仙地域のさまざまな試行錯誤を振り返った。
 熊本など国内外の被災地を飛び回り支援を続ける加藤医師は「気仙の皆さんの創意工夫を、広く共有する必要がある。私自身の役割として各地に伝えたい」と語った。
 災害時心のケア活動は、初期対応については強化。東日本の反省を踏まえ創設されたDPAT(災害派遣精神医療チーム)が熊本でも活躍した。だが、中長期は阪神以来、今なお試行錯誤が続く。
 気仙のみならず各地域で、震災以来の支援活動を振り返り、積極的に発信してほしい。できたこと、できなかったこと、できていないこと。いずれもが貴重な教訓として熊本の被災者の心を支える。
 

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