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【朝日新聞】 カンボジア 強権的手法に苦言を

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 国際社会による平和構築から四半世紀。曲がりなりにも公正な選挙を行ってきたカンボジアの民主主義が危機を迎えた。
 最高裁判所が、最大野党の解党を命じたのである。米国と共謀して国家転覆を謀ろうとしたとする政権の訴えを認めた。
 野党も米国も事実無根だとしてきた。最大野党が消えては、来年予定されている総選挙の正当性が問われよう。
 政権与党は、今年6月の地方選で野党に肉薄された。首相の座について30年を超すフン・セン氏はそれ以降、反対勢力への圧力を強めていた。
 最大野党の党首は逮捕、起訴され、所属議員の多くが国外に逃れた。政権に批判的な英字紙は廃刊に追い込まれ、米政府系の放送局は閉鎖された。選挙監視活動などに取り組むNGOも活動停止を言い渡された。
 カンボジアは東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でも経済的に遅れている。1人当たりGDPは1270ドルで、加盟10カ国の中で最下位だ。
 フン・セン氏は、ASEANで先に発展した国が用いた、開発独裁といわれる手法に倣おうとしているようだ。政治的自由より体制の安定を最優先し、トップダウンで政策を実現する。
 これは短期的には経済成長を得られても、汚職や格差の拡大で社会が不安定化するなど副作用も大きかった。フン・セン氏はこの点をよく理解すべきだ。
 日本にとってカンボジアは特別な存在である。
 初めて第三国の紛争解決に関わったのがこの国だ。1993年の国連による選挙実施の際、平和維持活動にも参加した。自衛隊を送り、文民警察や停戦監視員、選挙監視ボランティアなどに多くの日本人が加わった。文民警察官やボランティアに犠牲も出た。
 カンボジアでは70年代、ポル・ポト政権下で知識人の虐殺や強制労働で200万近い国民が死亡した。日本がゼロからの出発を支援した先には、人々の命と権利が守られる国に生まれ変わる姿を想像していたはずだ。
 フン・セン氏は今年8月に21回目の訪日をし、安倍首相と会談した。首相はフン・セン氏の「卓越した指導力」を称賛し、経済援助を約束した。
 インフラや人材育成の支援は必要だ。だが、首相が掲げる対ASEAN外交5原則の第1項は「自由、民主主義、基本的人権などの普遍的価値の定着、拡大に共に努力する」である。
 ならば、独裁色を強めるフン・セン氏に対して、しっかりと苦言も呈すべきである。

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