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【中国新聞】 「出国税」構想 国民負担増、安直すぎる

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 外国からの観光客は飲食や買い物に、お金をたくさん落としてくれる。その額は、年4兆円弱。経済効果は大きく、東京五輪を控える中、政府が唱える「おもてなし」の充実に異論はない。ただ、それにかこつけて国民になし崩し的な負担増を強いるようなら、話は別だ。
 案内標識の多言語表記や出入国管理システムの高度化、訪日客を受け入れる地方の観光振興の財源が要るとして、新たに「出国税」を創設する構想が政府内で持ち上がっている。
 サービス向上の恩恵を受ける訪日客から徴収するのは、まだ分かる。しかし出国者の約4割を占める日本人の海外旅行まで対象にするのはおかしい。受益者負担の原則にも反している。何より取りやすいところから取ろうというのは安直すぎる。
 訪日客の増加を安倍晋三首相はアベノミクスの成果と自賛する。出国税の導入は観光庁の有識者会議が提言した形を取っているが、官邸の顔色を忖度(そんたく)したのは想像に難くない。
 正式名は「観光促進税」という。1人千円が軸で、昨今の年4千万人の出国者を当てはめると約400億円となる。観光庁の現行予算の倍近い規模だ。
 似たような税は諸外国にもある。オーストラリアは日本円にして約5千円、韓国も約千円を徴収している。
 観光庁は「訪日客だけの課税は内外無差別の国際ルールに反する」としているが、外国人向け施策で受益者以外まで協力させるのは筋が通らない。既に空港の施設利用料などの負担がある中、重税感が増せば観光振興に水を差しかねない。
 政府は来年の通常国会に関連法案を提出し、2019年度から徴収したい考えだが、国民の理解や合意が欠かせない。
 その前段階として公平な議論が求められた観光庁の有識者会議が正常に機能したのか、疑わしい。結論を出すまで、わずか2カ月。計6回の会合は非公開で、税収の具体的な使い道や効果さえ明らかにしなかった。
 これでは訪日客特需や五輪対策を「金看板」にして一般財源を増やそうとしているように映る。新規課税を持ち出す前に観光庁や国土交通省、経済産業省など複数省庁にまたがる観光予算の重複や無駄を洗い出し、財源をひねり出すのが先だろう。
 税制は国民の理解と協力を前提とする点からも、民主主義の根幹ともいえる。消費税率引き上げは先の衆院選で争点となった。与党大勝という結果で、一定の信任を得られたといってもいいだろう。ただ出国税の議論は皆無に等しかった。選挙に勝ったからといって、政府が何をしてもいいわけではない。
 自民党の税制調査会は今週、本格議論をスタートさせた。右肩上がりの社会保障費をどう賄うか。会社組織に属さないフリーランスや共働き世帯の増加など、働き方が多様化する中、所得税はどうあるべきか。課題が山積する中、自民税調が国政選挙で5連勝中の「1強」首相に早くも唯々諾々の雰囲気が漂っているのはいかがなものか。
 来年は参院選や統一地方選などの大型選挙がない。歴代の自民党政権も、こうしたタイミングで増税に踏み切ってきた。説明責任を果たさず、有権者の審判から逃げ回るような政治は許されない。

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