Home > 社説 > ブロック紙 > 中日新聞 > 【中日新聞】 しっかり休むドイツ人 週のはじめに考える
E045-CHUNICHI

【中日新聞】 しっかり休むドイツ人 週のはじめに考える

そう思わないそう思う (+1 点, 1 投票)
Loading...

 歴史認識、原発問題で日本と比較されるドイツですが、ここでも対照的です。同じ経済大国でありながら、しっかり休んでいます。なぜでしょうか。
 二年前、クリスマス商戦たけなわなはずの十二月にベルリンを訪れた時のことです。
 滞在最終日の日曜に土産物を買おうと、繁華街のアレクサンダー広場に出たのですが、デパートは閉まったままでした。
 うっかりしていました。ドイツでは閉店法により原則、小売店は日曜には営業しないのです。 過重残業は上司に罰金
 現行の閉店法は一九五七年、西ドイツ時代に施行されました。ガソリンスタンドなど一部を除き、日曜のほか、平日も午後八時から午前六時まで小売店の営業が禁じられています。だから、コンビニはありません。
 閉店法の存在は第一次大戦前のドイツ帝国までさかのぼります。きっかけは、安息日を大切にしようというキリスト教の考えです。
 ドイツでは労働時間は一日八時間までと定められています。一日十時間を超えない範囲で働くこともできますが、六カ月間の平均労働時間は一日八時間以下にしなければなりません。違反すれば上司に最高一万五千ユーロ(約二百万円)の罰金が科せられます。
 統計では、年間労働時間(二〇一五年)は日本の八割ほどです。
 法定年次有給休暇は最低二十四日間あります。ミュンヘン在住のジャーナリスト、熊谷徹さんによると、ほとんどの企業が三十日間の有給休暇を認め、管理職を除けば百パーセント消化するのが常識なのだそうです(「5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人」、SB新書)。
 こんな話もあります。 罪悪感なく有給休暇
 ドイツで日本人が語学研修をした際、「夏休みはどのくらい取れるのか」と聞かれた。日数のつもりで「四から五」と答えたところ、「結構取っているな」と予想外の反応。
 よく聞くと、先方は四、五週間と思っていたことが分かり、がくぜんとしたそうです。
 日本の有給休暇取得率は50%ほど。ドイツの高い取得率について熊谷さんは「罪悪感を抱かない」との心の持ちようを指摘します。
 労働生産性−一人、一時間当たりの国内総生産(GDP)−は、ドイツが日本の約一・五倍に上ります。
 よく休んでいるのに、ドイツ経済は好調です。仕事の進め方にも理由があるようです。
 ある朝、ボンに住んでいた筆者のアパートのバスタブ交換のため、職人がやってきました。古いものをたたき割って取り出した後、休憩も取らず、風呂場にこもりっきりで作業を続け、昼すぎには新たな浴槽を設置し終えて帰っていきました。集中力に驚きました。
 ドイツでも規制緩和は進んでいます。売り上げを上げるため、当初午後二時までだった土曜の営業延長を認め、営業時間を決める権限も中央政府から州政府に移管しました。しかし、日曜、夜間営業禁止の“聖域”の大枠は、堅持しています。
 働く人への優遇は、客からすれば不自由です。
 四六時中、好きな物が手に入る生活に慣れている身にはストレスもたまりそうです。
 余暇が多いドイツ人は、買い物もせず、夜間や休日をどう過ごしているのでしょうか。
 家族や友人との食事、カップルでのオペラ鑑賞−そういった光景をよく見掛けました。
 日曜の閑散とした街中、連れだってウインドーショッピングをしている人たちとも、よくすれ違いました。買うわけではない。ただ、見ながら歩いているのです。時間が、ゆっくり流れているのを感じました。
 ドイツで暮らした当初は戸惑いましたが、食料などの生活必需品は土曜や仕事の合間を見て、買いだめするようになりました。通りの店が閉まりコンビニなどの明かりがない暗い夜にも、かえって落ち着きを感じるようになりました。ドイツ型ライフスタイルを実感したものです。 電力節減で脱原発も
 至れり尽くせりの日本人の繊細なサービスは、もちろん、すばらしい。しかし、仕事に追われて過労死や心の病に追い込まれ、肝心の人間がつぶれてしまっては、元も子もありません。営業時間や労働時間の短縮は電力の節減にもつながり、原発に頼らない世の中にしていくためにも有効です。
 それぞれの国のやり方には背景や事情があり、ドイツばかりがいいというわけではありませんが、社会にゆとりを生むヒントにできればと思います。  

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。