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【中日新聞】 鳥獣害対策 ジビエで地域に活気を

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 シカやイノシシなどが田畑や山を荒らす食害が深刻だ。対策は待ったなしだが、広がり始めた野生鳥獣肉(ジビエ)の活用にも注目したい。軌道に乗れば地域振興につながる可能性を秘めている。
 会場にはシカやイノシシのほかに、シェフが腕をふるったカラス肉の料理まで…。先ごろ、愛知産ジビエの普及を啓発するイベントが名古屋市内であり、地元の野生肉の試食も行われた。
 県に業務委託されたNPО法人が中心になり、愛知産ジビエの捕獲、食肉加工、流通販売、飲食店、消費者をつなぐネットワーク組織の早期設立を目指す。
 ジビエの現況やメリットなどを共有すれば、地元の理解や消費の拡大にたしかに有効だろう。
 ジビエはヨーロッパで貴族の伝統料理とされてきた食文化だが、肉食ご法度の歴史があるわが国でも、シカやシシ肉を人々は食べてきた。それがしばし途絶えて生息数が激増、今や害獣扱いされる事態になっている。
 全国のニホンジカ(エゾシカを除く)の推定生息数は約三百四万頭、イノシシが約九十四万頭。環境省の二〇一五年度のまとめだ。二十五年間でシカは約十倍、イノシシは約三倍にも増えている。
 生息域も広がり、人里にも頻繁に現れる。農作物被害だけで年に二百億円前後に上るが、都市部や生態系への影響ともなれば、被害は数字では到底表せぬだろう。
 政府は十年後にシカとイノシシの生息数の半減を目標に、高齢化などで減り続けるハンターの育成など「捕獲」を最優先に諸施策を講じている。そんな中、捕獲後の活用法として有力視されているのがジビエだ。たとえばシカは、焼却や埋設処分が多く、食肉利用率は一〜二割ほどだった。
 来年度予算に農林水産省は鳥獣害対策とジビエ推進として百五十億円(本年度九十五億円)を概算要求した。今、全国にジビエ処理加工施設は六百三十カ所ある。一年間で約八十カ所も増えた。愛知県には八カ所だが、ジビエの取り組みは他より早めだった。
 相手は野生動物。安定供給、肉質のばらつき、安全性をどう保証するかなど、多くの課題を克服するためにも組織化を考えた。
 都市への販路拡大はもちろんだが、山村でジビエ飲食店と特産物販売、食肉加工施設を一体にすれば、訪れた人々が命と向き合う場にも、高齢化や耕作放棄地の“気づき”の場にもなるだろう。  

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