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【朝日新聞】 議場に乳児 問題提起に向き合おう

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 熊本市の女性市議が先月、生後7カ月の長男を抱いて本会議に出席しようとして拒まれた。
 反響が広がっている。
 「幼子がいて働きたいのに働けない母親たちの声を代弁してくれた」という応援。「議員活動は子連れの片手間ではできない」という批判……。
 職場である議場に同伴するのではなく、議員として地域の託児施設の充実をめざすのが筋では、という問いかけもある。
 どの意見も一理ある。
 そう認めたうえで、この女性市議の行動を、価値ある問題提起だと考える。
 まず、女性の働きにくさをまっすぐに伝えたことだ。メッセージの分かりやすさが、職種を問わず、全国に、幅広い論議を呼び起こした。
 すべての議会に対する、良い意味での刺激にもなった。
 議会はさまざまな意見を吸い上げ、行政に反映させる場だ。本来、社会の縮図に近い議員構成が望ましいのに、現状は老若男女には程遠く、「老老男男」の議会がほとんどだ。
 子育て世代、とりわけ女性議員の少なさは深刻だ。地方議員の女性比率は13%に届かない。衆院議員も約10%で、先進国で最低レベルにある。
 乳児を連れて入れる議場にすることは、こうした現状を打開する一案になりうる。
 全国それぞれの議会が、地域の実情に応じて工夫をすればいい。それは議員のなり手不足の解消策にもつながる。
 たとえば、沖縄県北谷町(ちゃたんちょう)ではことし9月、町議が休憩時間に議員控室で授乳しながら本会議に出席した。
 議場に女性が増えれば、議会の雰囲気も変わるに違いない。
 人口減少問題を論じた衆院議員が「まず自分が子どもを産まないとダメだぞ」とヤジられる。「早く結婚した方がいいんじゃないか」と言われた東京都議や、出産したら「給料泥棒」と呼ばれた大阪市議もいる。
 女性議員に対するここ数年の暴言の数々は、議員の出産と育児が当たり前になれば消えていくだろう。
 海外との差は歴然である。
 女性議員が多いスウェーデンやデンマークでは、国会議員の育休制度も充実している。豪州では、ことし4月に現役の女性閣僚が出産した。5月には女性上院議員が連邦議会で初めて議場内で授乳した。
 議員活動をしながら出産や育児をしやすい制度を整える。
 そのことは議会に多様な視点を注入するために役立ち、社会を健全に保つことにも資する。

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