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【宮崎日日新聞】 無戸籍問題

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◆親子の規定抜本的見直しを◆
 親の事情から、無戸籍となる人がいる。「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子」とする民法の嫡出推定規定が背景にあり、法務省によると、その数は全国で715人に上るが、氷山の一角ともいわれる。上川陽子法相は各地の法務局に弁護士会や法テラスと連携した協議会を設け、戸籍取得のための裁判を支援するよう指示した。 進学や就職に暗い影
 前夫の暴力から逃れ家を出た母親が、離婚成立前に別の男性との間に子どもをもうけたが、300日規定で前夫の子とみなされたくないため、出生届を出さなかった-といったときに、子どもは無戸籍になる。パスポートを取れず、銀行口座も開けず、進学や就職、結婚に暗い影を落とす。調停や裁判によって新たな戸籍をつくることはできるが、裁判所で前夫と顔を合わせたくないなどの理由でためらう人は多い。
 法務省は市区町村を通じて無戸籍者の情報収拾を強化するとしており、支援が本格化すれば無戸籍の解消に一定の効果はあるだろう。しかし離婚や再婚、家庭内暴力が増え、無戸籍問題が後を絶たない中では根本的な解決にはならない。明治時代の民法施行以来、変わっていない300日規定を含め、親子関係に関わる制度全体の抜本的な見直しが求められよう。
 法務省は2014年に実態調査を始め、累計1495人の無戸籍者を把握。このうち戸籍を取得して問題を解消できたのは780人、解消率は52%にとどまる。大半は300日規定が原因とされ、この規定による嫡出推定を覆すために母親らの側ができることは極めて限られる。嫡出否認の訴えは夫の側しか起こせないからだ。 子どもの利益優先に
 前夫を法律上の父としないためには、前夫に「親子関係不存在」を確認する、あるいは実父に「強制認知」を求める裁判手続きを取る必要がある。ただ裁判費用を用意できないなどの理由で容易に踏み出せないという。
 07年に自民、公明両党のプロジェクトチームはDNA鑑定に基づく出生届や、民法にある女性の再婚禁止期間6カ月の短縮などを盛り込んだ法案をまとめ、無戸籍問題の幅広い救済につながるといわれた。だが保守系議員が反発。法務省が離婚後に妊娠したとの医師の証明書があれば300日規定の例外とする通達を出したこともあって、国会提出は見送られた。
 DNA鑑定は精度は高いが時間がかかり、嫡出推定で法律上の父子関係を早期に確定し、子の利益を図る必要性は大きいと法務省は言う。とはいえ、無戸籍解消の高い壁になっている。父親の欄が空白の状態で出生届を受け付けたり、嫡出否認の訴えを母親や子どもからも起こせるようにしたりするといった、多くの提案が専門家らから出されている。子どもの権利利益を守ることが最優先であり、そのために知恵を寄せ合いたい。

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