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【茨城新聞】 エルサレム首都認定 パレスチナ人思う心を

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トランプ米大統領は、エルサレムをイスラエルの首都と認め、第2の都市テルアビブにある米大使館を移転すると発表した。歴代の米政権は、政治的、宗教的に極めて複雑な問題であるエルサレムの地位はイスラエルとパレスチナの双方が交渉で決めるべきだとの立場を長年とってきたが、イスラエル側へかじを切る抜本的な転換である。東エルサレムを将来の独立国家の首都と位置付けるパレスチナは反発しており、中東情勢は混迷を深めそうだ。
トランプ氏は大統領就任以来、特定のイスラム教徒国からの入国を禁止したほか、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が「反イスラエル」に偏向しているとして脱退を決めるなど、イスラム圏に厳しくイスラエルに融和的な政策をとってきた。エルサレムの首都認定はその姿勢が最も劇的に表れたものであり、米国が中東和平交渉で訴えてきた「中立」の原則を名実ともに放棄したことを意味する。
トランプ氏は、エルサレムの首都認定について、和平実現のための「新アプローチ」の一環と説明した。しかし、入植拡大、分離壁建設など、パレスチナ人を力で封じ込めるイスラエルの政策が続く中で、その動きを後押しする今回の一方的な決定が、新たな交渉につながるとは思えない。国際社会が提唱してきたイスラエル、パレスチナの「2国家共存」はまったく見通せなくなった。
この決定は、米国内のユダヤ人組織や保守派がイスラエル寄りであるために、トランプ氏にとって自らの支持基盤を固めるという内政優先でもある。長期的な世界戦略に基づいていない。
イスラエルの行政府や議会など首都機能はエルサレムにあり、米政府当局者は、首都認定の決定を「既に事実となっていることを米政府として確認しただけだ」と説明している。イスラエル政府高官はパレスチナ人の反発について「パレスチナ人もアラブ世界も大きな抗議を起こす力を持っていない」と述べている。反発があっても圧倒的な軍事力で抑え込むもくろみのようだ。
イスラエルは情報技術(IT)を代表とする経済力をテコにサウジアラビアやエジプトなど、本来パレスチナ人側につくべきアラブ主要国と良好な関係を築いている。サウジはイスラエルと「反イラン」という戦略を共有し、石油価格の低迷などで、パレスチナ人の面倒をもはや見る余裕がない。エジプトも自国の安定維持で精いっぱいだ。
冷戦時代はアラブ側についたロシアや中国も今はイスラエルと友好関係を築いている。今回、米国にエルサレムを首都と認定させたのは、反イスラエル連合をつくらせないよう主要国と関係を改善してきたイスラエル外交の勝利でもある。
しかし、こうした冷徹な国際政治の転換の下で、パレスチナ人が忘れられている。パレスチナ人が孤独と怒りにさいなまれて、かつてのインティファーダ(反イスラエル闘争)のような暴力行動や、イスラム教徒の過激派がイスラエル内外でテロを起こすのではないか、との懸念は深まる。
ようやく過激派組織「イスラム国」(IS)が壊滅状態となったのに、新たな火種である。日本も含めてもう少しパレスチナ人の心を思いやり、その願いを政策で実現する努力が求められる。

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