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【産経新聞】 エルサレム「首都」 2国家共存の原則崩すな

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 トランプ米大統領が、エルサレムをイスラエルの首都と認定し、テルアビブにある大使館の移転準備を指示した。
 これまで国際社会は、パレスチナ国家を樹立し、イスラエルと平和共存させる「2国家共存」を目指す中東和平プロセスに取り組んできた。
 トランプ氏の決定は、さっそく中東諸国や英仏などから反発を招いている。従来の和平努力が水泡に帰しかねない、無謀な判断であることは否めない。
 トランプ氏は「2国家共存」の枠組みを否定はせず、引き続き和平に努めることも表明した。仲介の役割を放棄していない証しを、行動によって示すべきである。
 エルサレムはユダヤ、イスラム、キリスト教の聖地であり、パレスチナ側も「将来の首都」と主張している。その地位は和平交渉での最大の課題の一つだ。
 1990年代以降、交渉を仲介してきた米国が一方的にイスラエルの言い分を認めれば、仲介の役割を降りるに等しい。
 和平交渉は2014年を最後に途絶え、将来への展望が開けない現状にある。だが、4度の戦争を含め、憎悪と流血の末にたどりついた和平への道であることを軽視すべきではなかろう。
 「2国家共存」構想は日本を含め国際社会が後押ししてきた。各国が協力して知恵を絞り、和平プロセスを守る必要があることに変わりはない。
 中東地域は、スンニ派の盟主サウジアラビアとシーア派の大国イランの覇権争いで、シリアやイエメンの内戦が泥沼化している。過激組織「イスラム国」(IS)は弱体化したものの、拡散した戦闘員によるテロの脅威はなくなっていない。
 エルサレムの首都認定などは、トランプ氏の大統領選での公約だった。親イスラエルの保守層などを意識したのだろう。
 そうした国内向けの判断が、世界の平和と安定を犠牲にすることは容認しがたい。河野太郎外相が「中東和平をめぐる状況が厳しさを増す懸念がある」と表明したのは当然である。
 決定を受け、イスラム過激組織が暴力を煽(あお)り、アラブ世界での抗議行動がエスカレートする恐れがある。もとより暴力を正当化することは許されないが、米国には大使館の移転など今後の具体的な措置について慎重さを求めたい。

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