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【読売新聞】 首都エルサレム 米国の認定は中東の混乱招く

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 イスラエルとパレスチナの和平合意を建設的に仲介するという基本姿勢に疑問符が付いた。米国の外交政策への信頼が低下し、中東が一層混乱するのは避けられまい。
 トランプ米大統領が、エルサレムをイスラエルの首都と認定し、テルアビブにある米大使館の移転を準備するよう、国務省に指示した。エルサレムにイスラエルの政府や議会があり、首都として機能していることを理由に挙げた。
 国際社会の共通認識とは大きく異なる。理解に苦しむ決定だ。
 1967年の第3次中東戦争で、イスラエルは支配地を拡大した。旧市街を含む東エルサレムを占領し、西側と合わせた全域を「不可分の首都」と宣言している。
 パレスチナ自治政府は、東エルサレムを「将来の首都」と位置付ける。旧市街には、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地が集中する。エルサレムの帰属は宗教が絡む複雑な問題だ。
 日本を含む各国政府は、「帰属は当事者間の交渉で決めるべきだ」との中立的な立場をとる。菅官房長官が、この原則を改めて示したのはもっともだ。各国がテルアビブに大使館を置くのは、和平への障害を避ける目的がある。
 米議会が1995年に大使館をエルサレムに置く法律を定めた後、歴代米大統領が執行を先送りしてきたのも同じ理由からだ。
 自治政府のアッバス議長は、「和平プロセスを損なうだけでなく、地域を不安定化させる」と、トランプ氏の突然の決定を激しく非難した。自治区ガザでは大規模なデモが起き、アラブ諸国の首脳らも一斉に反発を表明した。
 河野外相は今月下旬に、イスラエルやパレスチナを歴訪する方向で調整している。国連安全保障理事会も緊急会合を開く。事態の沈静化に寄与してもらいたい。
 トランプ氏は、和平合意の実現を引き続き支援すると強調した。イスラエル寄りの立場をこれほど鮮明に示して、仲介できるのか。2014年から中断している交渉の再開は一段と困難になった。
 昨年の米大統領選で掲げた「首都移転」の公約を実現させ、支持層にアピールする狙いが、トランプ氏にはあろう。政権とロシアの癒着疑惑から、国民の目をそらせる思惑も否定できない。
 「内向き」の外交施策に国務省が歯止めをかける役割を果たしていないのは問題だ。米国の中東戦略は、エネルギー安全保障や世界経済に影響を及ぼす。政権は、重い責任を認識せねばならない。

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