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【高知新聞】 【エルサレム問題】米は中東和平閉ざす気か

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 国際社会が忍耐を持って、解決策を模索し続けてきた中東和平の道を閉ざしかねない。
 トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの「首都」に認定した。テルアビブにある米大使館も移転するという。
 エルサレムの帰属を主張し合うパレスチナとイスラエルの間に立つ「公正な仲介者」として、米国が積み重ねてきた和平プロセスをかき消すような政策転換である。
 パレスチナ自治政府をはじめエジプトなどイスラム諸国は猛反発し、欧州諸国からも批判の声が上がっている。トランプ氏は自ら火種を起こしながらなお和平の実現へ「関与し続ける」との姿勢も見せる。全く整合しない。国際社会からも理解されまい。
 ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地があるエルサレムは、宗教的、民族的な対立が複雑に絡み、憎悪と暴力が連鎖する戦火の歴史を刻んできた。
 国連も和平に関わり、米国、ロシア、欧州連合と共に提示した2003年の「新和平案」で、パレスチナとイスラエルは互いの交渉で紛争終結を目指す「2国家共存」で合意。国際社会は中東安定の道として粘り強く支持してきた。
 米議会は1995年にエルサレムをイスラエルの首都と認定するよう求める法律を可決したが、歴代米政権は中東の混乱回避や、安全保障上の問題を理由に延期し続けてきた経緯もある。パレスチナ、イスラエルの双方に配慮しながら、平和的対話を促す大国のバランス感覚だったのではないか。
 そうした国際社会の願いとは裏腹に2014年以降、中東和平交渉は行き詰まっている。トランプ氏はこれまでの和平仲介の取り組みを「失敗」と切り捨て、イスラエルへの肩入れを一層強めた。
 昨年の米大統領選で、トランプ氏は「エルサレムへの大使館移転」を公約に掲げ、親イスラエルのユダヤ系やキリスト教右派の支持を得たとされる。特段の外交成果を上げられない中、今回の首都認定は国内の支持者向けアピールという、内向きの政治的思惑を色濃くする。
 そこに大局観はなく、パレスチナとイスラエルの対立をあおり、中東情勢の混迷を深めるばかりだ。和平交渉の再開を遠ざけることにもなろう。世界の平和や安定の基盤構築をリードすべき大国の信頼も、権威も自ら失墜させよう。
 新たな紛争やテロを呼び起こす恐れも増す。現にパレスチナやイスラエルは武力衝突や民衆蜂起への警戒を強めているという。その脅威は米国ばかりか、世界に飛び火しかねない危険性をはらむ。
 日本は国連の場や当事者間交渉による解決を支持する立場を取る。菅官房長官は「米国を含む関係国と緊密に連携しながら対応したい」と述べた。平和社会を追求する国として、友好国の横暴な振る舞いをただす役割があるはずだ。

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