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【京都新聞】 エルサレム  首都認定は和平に逆行

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 中東和平に逆行する無謀な決断であり、懸念を禁じ得ない。
 トランプ米大統領が、長年のタブーを破ってエルサレムをイスラエルの首都と認定し、米大使館のエルサレムへの移転を決めた。
 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地が集中するエルサレムの帰属は、中東和平交渉の核心とも言える。それを一方的に判断したことで混乱が増すのは必至だ。
 イスラエルは1967年の第3次中東戦争で占領・併合した東エルサレムを含めた全域を「不可分の永遠の首都」と主張する。しかし、日本を含め各国とも首都と承認せず、在イスラエル大使館を商都テルアビブに置いている。
 ただ米議会は95年にエルサレムを首都とし、大使館移転を政府に求める法案を可決した。だが歴代大統領は半年ごとに実施を延期し、大統領選で大使館移転を公約に掲げたトランプ氏も今年6月、混乱を懸念する政権内の声に配慮して移転を先送りしていた。
 ところが、ロシア疑惑を巡り元側近が訴追されるなど政権基盤が揺らぐ中、キリスト教保守派やユダヤ系の支持層を意識し、アラブ諸国の強い反発を承知で方針転換に踏み切ったとみられる。歴代米政権の方針にとらわれない「強い指導者」を演じたいトランプ氏の思惑が透けるとはいえ、独断的で危険な振る舞いである。
 パレスチナ当局は6~8日を「怒りの3日間」とし抗議活動を表明。サウジアラビアなど中東各国が「世界中のイスラム教徒の感情を刺激する危険な行為だ」と一斉に抗議したのは当然だろう。
 懸念されるのは、米政権の決定にイスラム過激派などが反発して各地でテロを起こし、暴力の連鎖を招きかねない点だ。トランプ政権と「親密」な日本にとっても人ごとではない。
 トランプ政権は米国が中東和平実現への取り組みを放棄するとの意味ではないと強調する。しかし米国が「公正な仲介者」としての信頼を喪失したのは間違いない。そもそもトランプ氏の基本姿勢はイスラエルへの肩入れが如実であり、新戦略で「中東和平を追求する」と言っても説得力に欠ける。
 トランプ氏は就任以来、温暖化対策の新枠組み「パリ協定」脱退や、イラン核合意の破棄を辞さない方針を相次いで打ち出した。改めて自らの公約を優先させるトランプ氏の外交姿勢が鮮明になった。国際社会の懸念を無視した独善的な外交を進めれば今後、米国の孤立は一段と深まろう。

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