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【徳島新聞】   平和賞演説   核廃絶の新たな出発点に  

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 「核兵器は絶対悪」。被爆者のこの悲痛な叫びを国際世論にまで高めたい。
 
 ノーベル平和賞の授賞式がノルウェーの首都オスロで開かれ、席上、初めて被爆者が演説した。
 
 今回の受賞団体である非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)と共に、核兵器禁止条約の実現に尽力したカナダ在住のサーロー節子さん(85)である。
 
 13歳の時に広島で被爆し、家族と級友351人を失った。4歳だったおいの体は溶け「肉の塊に変わった」という。壮絶な体験を踏まえ、禁止条約を「核兵器の終わりの始まりにしよう」と呼び掛け、満場の拍手を浴びた。
 
 一方で授賞式は、核保有国と非核保有国との間に広がる溝もあらわにした。核保有五大国の駐ノルウェー大使が慣例を破って欠席したのは、厳しい現状を反映している。
 
 日本は今こそ、保有国と非保有国の橋渡し役として存在感を示すべきである。唯一の戦争被爆国だからこそ果たせる役割があるはずだ。
 
 文学賞の授賞式に臨んだ長崎県出身の英国人作家カズオ・イシグロさん(63)のスピーチは示唆的だった。
 
 ノーベル賞は「ヘイワ(平和)」を促すための賞だと母親から日本語で教わったとし、こう述べた。「ノーベル賞は、分断の壁を越えて考えさせ、人類として共に取り組むべきものは何かを思い起こさせてくれる」
 
 世界には約1万5千個の核兵器が存在するとされる。核拡散防止条約(NPT)体制での段階的削減が進まないばかりか、米国やロシアは核兵器の近代化に力を入れている。むしろ逆行ともいえる状況に業を煮やした非保有国の不満を背景に、核兵器禁止条約は採択された。
 
 核抑止力を安全保障の中核に据える保有国が拒絶している以上、禁止条約は実効性に乏しいとの批判は絶えない。核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮と向き合う日本が、制定交渉に加わらなかったのもこのためだ。
 
 しかし、120カ国以上の賛成で採択された条約の重みを、改めて認識する必要があろう。米国の「核の傘」への依存を一層強めている現状は、日本の在り方として正しいといえるだろうか。
 
 河野太郎外相は授賞式を受けた談話で「アプローチは異なるが、核兵器国と非核兵器国の信頼関係を再構築し、核兵器のない世界の実現に向けて着実に前進する決意だ」と強調した。ならば行動で示すべきではないか。
 
 人類と核兵器は共存できない。分かりすぎた事実でありながら廃絶への道は遠い。
 
 サーローさんは、がれきの中に閉じ込められた際、「諦めるな。光に向かってはっていくんだ」との声に励まされて助かったという。核兵器を非合法化する禁止条約に光を見る被爆者の切実な訴えに応えなければならない。

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