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【岩手日報】 生活保護の削減 実態把握は十分なのか

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 5年に1度の生活保護費見直しで、食費や光熱費などに充当される「生活扶助」が一部世帯で引き下げられる見通しだ。
 厚生労働省の改定案によると、主に大都市部で最大14%カット。年齢や世帯形態によって増額となるケースもあるというものの、全体では、3年かけて平均6・5%減じた前回2013年度の改定に続く2回連続の引き下げだ。
 折も折、自民、公明の両与党は、特権的な仕組みが批判を浴びるなどして11年に廃止された地方議員年金の事実上の「復活」を検討し始めた。議員のなり手不足解消が名目だが、該当する過疎地のみならず都市部や都道府県議会の議員も対象という。
 導入されれば、自治体が保険料の半額を負担するため新たに総額200億円の公費が必要との試算もある。百円単位の増減に生活が左右される人々がいる中で、政治は無神経に過ぎるのではないか。
 会計検査院がまとめた16年度の「税金の無駄遣い」は、総額874億円余。国と地方を問わず、歳費や政治資金に絡む無駄や不明朗な会計も相次いで顕在化している。
 高齢化などに伴い、社会保障費は増加の一途。政府は16〜18年度の3年間で、自然増を計1兆5千億円に抑える方針を掲げる。財政上、抑制が喫緊の課題には違いない。
 今年も年金や医療、子育てなどの分野で保険料の値上げや給付の引き下げを実施。来年度は介護保険制度の「生活援助」が抑制の方向で見直される。生活保護の見直しもこうした流れに位置付けられようが、減額するなら国民が議論を受け入れられる環境づくりに腐心するべきだ。
 「引き下げありき」の姿勢が、憲法が保障する「最低限度の生活」を脅かすようでは本末転倒。減額は、一般の低所得世帯の消費支出額と比較して判断されるが、低い方に合わせるのは憲法の精神に逆行するだろう。
 そもそも生活保護を必要とする人の2割程度しか受給していないとされる現状で、どこまで実態を把握できているものか。生活保護受給世帯に占める高齢者世帯の割合は昨年、5割を超えた。うち9割は単身。このままでは保護の網から漏れる人がますます増えていく懸念がある。
 社会福祉法人の社会貢献活動を責務とする昨年の関連法改正を受け、本県では県社協加盟法人が連携して独自の活動資金を基に訪問支援や現物給付を行う事業を展開。関係者は「困窮世帯は思っている以上に存在している」と、現状認識は厳しい。
 議論の手始めは実態を正確に知ることだろう。自らの生活保障を心配する政治では、志を疑われても仕方ない。
 

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