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【西日本新聞】 巡航ミサイル 専守防衛を踏み出すのか

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 防衛省は、数百キロ離れた目標を攻撃できる長距離巡航ミサイルの導入を決めた。日本の安全保障の大原則「専守防衛」から踏み出す懸念がある重大な政策決定だ。
 巡航ミサイルは翼で姿勢を保持しつつジェットエンジンで飛ぶ無人誘導のミサイルである。射程が長く精度が高いため、艦船や地上の重要施設への攻撃に用いられる。米国のトマホークが有名だ。
 防衛省が導入するのはノルウェー製(射程約500キロ)と米国製(同900キロ)で、航空自衛隊の戦闘機に搭載して使う。防衛省は使用目的として、日本の離島に侵攻する敵への対処や、イージス艦を狙う敵艦船への攻撃を挙げる。
 問題なのは、この射程の長いミサイルの保有が、事実上「敵基地攻撃能力」の獲得につながるという点である。
 敵基地攻撃能力とは、敵国のミサイル基地などをたたく能力だ。政府はこの能力について、日本へのミサイル攻撃が迫り、他に手段がない場合などでは「法理上は憲法が認める自衛の範囲」で可能との解釈を示してきた。
 しかし、基本的に相手の領土への直接攻撃であり「専守防衛」との整合性が問われるため、現実には敵基地攻撃のための装備を保有してこなかった経緯がある。今回導入されるミサイルならば、性能上は日本海上空から北朝鮮領土への攻撃が可能だ。
 小野寺五典防衛相は導入について「敵基地攻撃を目的としたものではない」と否定しているが、小野寺氏はもともと敵基地攻撃能力保持の推進論者だ。能力保有への布石とする意図が見え隠れする。
 「相手の領土を直接攻撃する手段を持たない」ということは「相手国にこちらを先制攻撃する口実を与えない」ことでもある。そうした意味で専守防衛は一種の抑止力としても機能している。
 集団的自衛権の行使を巡る憲法解釈変更と同じように、政府が専守防衛の大原則をなし崩し的に転換しようと考えているのであれば、断じて許されない。来年の通常国会で徹底的な議論が必要だ。

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