Home > 社説 > 全国紙 > 朝日新聞 > 【朝日新聞】 税制改革 将来像なきつぎはぎだ
E015-ASAHI

【朝日新聞】 税制改革 将来像なきつぎはぎだ

そう思わないそう思う (まだ投票していません)
Loading...

 政府・与党が来年度の税制改正大綱をまとめた。
 中長期的に目指すべき姿を念頭に置きつつ、足元の政策課題に対応する。そうした取り組みが求められたのに、今回の大綱からは税制全体の将来像が読み取れない。
 再来年秋の消費増税にあわせた軽減税率導入による目減り分を補いたい財務省。デフレからの完全脱却と経済活性化が最優先の首相官邸。両者の間で右往左往する与党幹部。その結果、個人にはあちこちに負担増が、企業向けには優遇策が並び、つぎはぎ改革案ができあがった。
 国民への影響が大きいのは所得税の見直しだ。会社員向けの減税措置である給与所得控除を縮小し、すべての人が受けられる基礎控除を拡大する。
 その結果、年収850万円を超える230万人、給与所得者の4%で負担が増し、合計で約900億円の増税になる。一方、フリーランスや個人請負で働く人は減税となる。
 給与所得控除が適用されるかどうかで生じる不公平を小さくし、所得税による再分配を強めるというなら、方向性は理解できる。政府・与党は引き続き給与所得控除の一部を基礎控除に振り替えていく方針のようだが、ならば最終的な姿を示した上で、納税者に丁寧に説明していくべきだ。
 所得税は他にもさまざまな課題を抱えており、抜本的に作りかえることが急務だ。富裕層の優遇につながっている金融所得への課税の手直しをはじめ、「ひずみ」を正す作業も忘れてはならない。
 8年ぶりのたばこ増税のほか、日本からの出国者に千円を課す国際観光旅客税、住民税に一律千円を上乗せする森林環境税も、個人への負担増だ。
 「旅客税」は、国税としては92年の地価税以来の新税になる。訪日観光促進策に熱心な官邸の意向を背景に、夏に浮上すると異例の速さでまとまった。歳出削減で財源を捻出すべきではないか、無駄遣いを招くおそれはないかといった疑問や懸念は、森林環境税にも共通する。
 わずか2カ月前の衆院選で、首相はこうした負担増には触れなかった。一方、法人税では、賃上げと設備投資を促す「アメ」が目玉だ。利益が増えたのに賃上げなどに消極的な大企業には、既存の減税措置の一部を受けられなくする「ムチ」も設けるが、負担増が並ぶ個人とは対照的である。
 税制についてどんな見取り図を描くべきなのか。年明けの国会で徹底審議が必要だ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。