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【中国新聞】 生活保護見直し 格差拡大を招かないか

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 「最後のセーフティーネット」が、その役割をしっかり果たせるのだろうか。厚生労働省は、生活保護費のうち食費や光熱費に充てる「生活扶助」について、最大5%引き下げる方向で検討している。
 例えば、都市部で小学生と中学生がいる40代夫婦の世帯は月約9300円減、単身の高齢者は月約4千円減となる。最大14%の引き下げとした当初案より抑えたが、家計への影響は少なくない。生活保護の受給者から「今でも生活が苦しいのに」と悲痛な声が聞こえてくる。
 2013年度から3年かけて平均6・5%カットしたばかりだ。いま政府は景気は回復基調にあると声高に叫び、賃金引き上げを促しているのに、貧困世帯の支援を切り下げる理由が、どこにあるのだろう。
 まず疑問に思うのは、政府が進める教育無償化など、子どもの貧困対策と矛盾しないかということだ。
 ひとり親世帯が対象の母子加算や、3歳未満への児童養育加算も引き下げる方向という。厚労省の審議会がまとめた報告書には「子どもの健全育成に逆行することのないよう、十分配慮を求めたい」という留意事項が盛り込まれた。重く受け止めなければなるまい。
 また、生活保護費の引き下げは、私たちの老後の不安を助長することにもつながる。受給者で増えているのは、高齢者世帯である。今年9月現在で全体の52・9%に及ぶ。そのほとんどが1人暮らしで、年金だけでは生活できないとみられる。
 年金財政は厳しく、今後も手取りの実質額は減っていく見込みだ。高齢化に伴って老後が長くなると、貯蓄も底を突くかもしれない。この先、高齢者世帯の受給者はもっと多くなる。いざというときに頼れる制度は、その意味でも大切だろう。
 もちろん、一部にある不正受給はゼロにしたい。受給者の医療費の適正化や、劣悪な環境に住まわせて保護費をむしりとる「貧困ビジネス」の規制強化にも手を尽くすべきだ。ただ、必要な人に必要なサポートが行き届かなくなるのは困る。
 今回の見直しは、日々の生活にいくら必要かということを、軽視していないだろうか。
 見直しの根拠は、生活保護の受給世帯の生活費が一般の低所得世帯を上回るという比較検証に基づく。その結果「より低い方に合わせる」との考え方には違和感が拭えない。実際、審議会の報告書にも「検証結果を機械的に当てはめないよう、強く求める」と明記されている。
 生活保護を受けられる世帯のうち実際に受けているのは2割程度、とみる専門家は多い。保護を受けると車が所有できないことや、保護自体への抵抗感が理由とみられる。受けるべき支援を受けず、より困窮した世帯に保護基準を合わせる—。それで憲法25条で定めた「健康で文化的な最低限度の生活」を守れるのだろうか。
 今年の厚生労働白書によるとこの20年、40代の世帯主について低所得者世帯の割合が増えている。所得が低い人が増えるほど保護基準が下がれば、さらなる格差拡大を招きかねない。
 保護基準は、最低賃金や他の低所得者対策の基準にまで波及する。見直しには、慎重に慎重を期すべきである。

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