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【河北新報】 「核時代」の岐路/国際社会の英知が試される

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 広島、長崎に原爆が投下されて「核時代」の扉がこじ開けられてから70余年。私たちは人類に破滅をもたらす核兵器という恐ろしい「魔物」と、いや応なしに向き合って生きている。
 現在の核を巡る状況を直視すれば、国際社会が重大な岐路に立たされているのは間違いない。歩んでいく道程によって希望が膨らむかもしれないし、絶望のどん底に突き落とされるかもしれないからだ。
 今なお、核の使用を抑制するために核保有を正当化する「核抑止力論」が幅を利かせている。凄惨(せいさん)な結末を招くことへの恐怖が、核兵器の使用を思いとどませるという理屈だ。米国、ロシアを中心に約1万5千発の核弾頭が現存するという。
 筆舌に尽くし難い経験を強いられてきた被爆者にとって、到底受け入れられない現実だ。被害の実相と核兵器の非人道性を訴え続けてきた結果、廃絶に向けて使用や保有などを禁止する史上初の「核兵器禁止条約」が昨年7月、国連で採択された。
 ただ、五大核保有国や、日本を含む米の「核の傘」に頼る国々は制定交渉に参加しておらず、深い溝が残ったまま。被爆者が廃絶の祈りを込めた「一滴」が指導者たちに浸透し、核の世界秩序を変える「大河」の流れになればいい。唯一の被爆国の日本はその先頭に立つべきだ。
 条約の採択をけん引した非政府組織「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)に、ノーベル平和賞が贈られた。「核兵器の開発は国家の偉大さが高まることを表するものではなく、国家が暗黒の淵へと堕落することを表しています。核兵器は必要悪ではなく絶対悪です」。広島で被爆したサーロー節子さんは授賞式でこう演説した。
 その言葉と正反対に、「核兵器が国家の力」と信奉している代表が北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長だ。国際社会の制止を無視して、核・ミサイル開発にまい進。最大限の圧力で抑えこもうとするトランプ米大統領との間で緊張が高まっている。
 一歩間違えば、軍事衝突を招きかねない瀬戸際にある。米政府の元高官が「核兵器が使用される危険性は、キューバ危機までさかのぼり50年余で最も高まった」と指摘するほどだ。
 では日本は、というと、安倍晋三首相は大統領と圧力強化で歩調を合わせ、核の傘への依存を強めている。だが、核抑止力はあやふやなもので、本当に機能するか、だれも分からない。
 核の傘に守られていると言われているのに、私たちは北朝鮮の核に脅威を感じている。それ自体、核抑止力に対する信頼が揺らいでいることの証しではないか。「破れ傘」にすがっているのが実態かもしれない。
 米国が威嚇すればするほど、北朝鮮が核を諦めないのでは、との懸念が募る。今年も先が読めない。確かなのは戦争を絶対阻止しなければならないということ。外交努力を含めて国際社会の英知が試されるときだ。
 アインシュタインは言う。「全体の破壊を避けるという目標は、他のあらゆる目標に優位せねばならない」と。

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