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【高知新聞】 【岐路の年】世界 分断の深まりを超えて

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 2018年が明けた。
 昨年の国際政治・経済の世界は、数年前から続くテロや内戦などによる排外主義や保護主義の流れを受けて、それらが一層進んだ年とみていいだろう。
 米国ではトランプ大統領が就任し、難航している政策はあるものの選挙公約通りの「米国第一主義」を推し進めている。
 欧州でもフランスやドイツなどの国政選挙で、辛うじて欧州統合の崩壊を食い止めたが、反・欧州連合(EU)を掲げる極右政党の台頭を許した。
 「私にとって大切なのは、物語が感情を伝えるということであり、国境や分断を超えて人間が共有するものに訴えかけるということだ」
 昨年、ノーベル文学賞を受賞した日本生まれの英国人作家、カズオ・イシグロさんは、12月に行った講演でそう聴衆に語りかけた。
 国境とか分断の意識というものが、人間の共存を妨げる危機感をにじませた。分断の意識は人の心に憎しみを生み、争いへと向かわせる。数年前から引きずる分断の世界をどう克服するかが、ことしも課題になるだろう。
 分断とは何か。富める者と貧しい者、エリートと非エリート、右翼的思想と左翼的思想、あるいは人種差別なども含まれよう。
 東西冷戦の終結以来、分断の世界は一定程度、解消され、融和と平和へと向かうかにみえた。だが、21世紀初頭の米中枢同時テロ以降の度重なる戦争や、世界規模の経済危機などで、さまざまな格差が広がっている。
 私たちは分断が危険なまでに深まるのか、ここで踏みとどまるのかという時代の岐路に立っている。試練を乗り越えたい。
 それには特効薬はなく、やはり互いの存在を認め合う寛容の精神に立ち、多様性のある社会や国々を取り返すしかあるまい。しかも国家というレベルではなく、市民社会という「下からの再構築」が求められているのではないか。
 国家という視点に立てば、どうしても自国の利害を優先し、対立の構図に陥りやすい。だが核兵器禁止条約の採択をけん引し、昨年ノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は非政府組織(NGO)だ。
 いわば市民レベルの国際組織が国家の分断を包囲し、人道主義へと導く時代といえる。下からつくり上げられた力は、しなやかで強い。これはそれぞれの国の分断解消にもヒントになろう。
 年明け早々、昨年から持ち越した北朝鮮情勢から目の離せない1年になった。米中が危険な軍事の競争をエスカレートさせるのか。それとも分断から融和へと向かい、多国間の協調が図られるのか。
 ことしは米国の中間選挙の年でもある。国内外にかつてない分断を抱えるトランプ政権の2年間に、米議会はどんな審判を下すのだろう。

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