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【山陽新聞】 地域の未来 ローカルの価値生かそう

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 新たな年が明けた。時代はこれから大きく「変化」しそうである。
 緊迫する北朝鮮情勢や、トランプ米大統領によってかき回される国際社会の先行きが見えない。国内では2019年5月1日の改元へカウントダウンが始まった。30年4カ月で幕を閉じる「平成」の、次の30年はどんな時代になるのか。「ポスト平成」はかつてない難題が待ち受ける。
 少子高齢化が進展し、25年には団塊世代が全て75歳以上の後期高齢者になる。推計によると、高齢者人口が3935万人のピークに達するのは42年。減り続けている総人口は、30年後は1億人割れ(53年)が目前だ。
 それは、どの国も経験したことのない道であろう。
 ノンフィクション作家の保阪正康さんは「日本人にとって元号は句読点、息継ぎではないか」と言う。時代の区切りを刻む改元を前に、地域の未来を考える年にしたい。 ■田園回帰の流れ
 地方から人や物、金を吸い上げ、膨張を続けてきた巨大都市・東京。その一極集中の是正と地方の衰退が長年指摘され続けてきた。
 いま、その東京の限界に多くの人が気づき始めている。高度成長期に流入した人たちが高齢化し、医療や介護の施設・サービスが今後、急激に不足する。
 人口が多い分、直面する社会保障問題はより深刻となろう。合計特殊出生率が全国一低い東京に、若者が集まって少子化が進む「ブラックホール」現象も危惧される。
 もう東京の独り勝ちはありえない。日本が国として持続可能であり続けるには、歪(ひず)みを正し、移住やUターンなどで地方への人口流入や定着を促すことが重要である。
 若者たちが地方に引きつけられる「田園回帰」の流れが加速している。本当の豊かさを求めて、あるいは自分のできることを生かせる居場所を探して、人生の価値を「ローカル」に見いだそうとする人たちである。
 地域の自立を目指す動きも広がっている。地元の価値や課題を探す「地域学」。エネルギーなどの地元資源を地域で回す「地産地消」。
 地方に吹く、こうしたチャンスをぜひつかみたい。 ■地域に溶け込む
 昨年連載した「Lの時代へ
 歪みを超えて」で紹介した高梁市の宇治町地区は、行政に頼らない地域ぐるみの活動で移住者を集めている。
 この5年で約30人が移ってきた。多くは子育て世代だ。地元の「住むか暮らす会」が空き家の仲介や引っ越しの手伝いを行い、受け入れ先の集落は歓迎会などで気を配る。悩み事の相談に乗る先輩移住者らの会があるのも強みだ。
 それでも、縁のない地域への移住はそう簡単ではない。「最終的には人と人とのつながり、信頼関係」。そう話すのは住むか暮らす会会長の牧野義広さん(62)。希望者と事前に田舎暮らしの覚悟や、地域活動の大切さなどを話し合うことも大事だという。
 地方には助け合いの精神がまだ色濃く残る一方で、外から来る人を「よそ者」と見る傾向もなくはない。
 移住者が地域に溶け込み、「風の人」から「土の人」になる。そしてまた新たな人が外から呼び込まれる。そんな好循環が求められよう。 ■瀬戸大橋30年
 30年という歳月は長いようで、短い。時代が平成に変わる前年、夢の架け橋として開通した瀬戸大橋も今年で「30歳」を迎える。
 本州と四国を結ぶ大動脈の誕生で、当時は「瀬戸内新時代」到来が熱く語られた。
 平成の歩みは、橋の歩みとも重なる。この間、地域はどう変わったか。未来予想図の検証もまた、必要だろう。
 人口減少社会は「下り坂」にも例えられる。経済の縮小を心配する声は多い。
 しかし、「人口が減り、エネルギーと食料が足りる方向に向かっている日本の将来は本当は明るい」。著書「里山資本主義」で知られる藻谷浩介さんは最近の対談本「経済成長なき幸福国家論」でそう述べていた。
 前を向いて、地域の活路を開きたい。

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