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【信濃毎日新聞】 暮らしの中で 人と在ることの大切さ

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 考えさせられます。
 2017年に生まれた赤ちゃんは、前年に続いて100万人を割り、人口減少数も40万人に上る、との推計値が公表されました。25年には高齢者が人口の3割を占める社会になります。
 少子化が進み、雇用は不安定なまま、格差は広がっている。政府は、経済成長が豊かな生活に結び付くとうたいます。その歯車はかみ合わなくなり、社会保障制度も機能不全に陥りつつあります。
 先の見えない不安感を共有し、協力し合う関係性が、これまでに増して必要になっている。
 人と人とのつながりを築き直そうとする現場を、この目で確かめたくなりました。
 
 
 <新たな関係を築く>
 東京都多摩市の「コレクティブハウス聖蹟」を訪ねました。
 一見、ちょっとおしゃれな地上2階、地下1階建てのマンションで、20〜70代の男女23人と子ども8人が生活しています。居住者が協力して管理運営し、広い共用空間で日常の時間を共にするところに特徴があります。
 掃除や戸締まり、会計、屋上の菜園での作業、植栽の手入れ、イベントの運営…。居住者全員が役割を担う。課題を話し合い、ルールを見直す毎月の定例会は数時間に及ぶこともあるそうです。
 「コモンミール」という夕食をいただきました。当番の人がメニューを考え、買い物をし、他の居住者分の食事を作ります。時刻になると、三々五々食堂に集まってくる。盛り付けや片付けをしながらの会話、子どもたちの声がにぎやかに響いていました。
 互いの存在が意識の変化をもたらしているようです。
 6年半前に単身で入居した60代の女性は、以前は関心がなかった子どもとの接点を積極的につくるようになったと言います。人付き合いが苦手だった40代の男性は、ハウスの外の住民との交流も深めたいと、2カ月に1度、お茶会や餅つきなどのイベントを開くようになっています。
 ハウスを提唱し、運営を支援しているのは、豊島区のNPO法人「コレクティブハウジング社(CHC)」。従来の家族観や住まいの形にとらわれずに緩やかな人と人との関係を築き、「共に住み、創る」ことを通じた暮らしの質の向上を目指しています。
 これまでに都内で4棟のハウスを実現させ、群馬や神奈川へと事業を広げています。増加する空き家を共有空間とし、周囲の住民が運営に加わる「タウンコレクティブ」も展開しています。
 
 
 <方法はさまざまに>
 社会学者の見田宗介さんが、こんなことを書いています。
 互いの利益のために、と始まることであっても、やがて効用への期待はなくなり「純粋な情熱と歓(よろこ)びの源泉」になり得ると。
 ハウスでも、そうした現象がうかがえます。高齢者が動けなくなり、共同作業を担えなくなったらどうするか―。居住者が言っていました。「放っておけない。福祉施設の代わりにはなれなくても、できることを探りたい」
 人と人との関係をつくるモデルを、CHCの取り組みにだけ求めるつもりはありません。方法は多様であっていい。
 複数の人が共同で生活する「シェアハウス」はよく知られています。最近は高齢者と若者が一緒に暮らす「異世代同居」の試みが各地で始まっています。石川県にはケア付き高齢者住宅や障害者施設が併存する「誰もが共に暮らす街・シェア金沢」がある。
 既存の共同体も捨てたものではありません。田舎暮らしに憧れて地方に移住する若い人たちが増えています。長野県を含め全国の自治体で活躍する地域おこし協力隊員の半数超が、そのまま定住する傾向も見られます。
 関係を結び直すハウスのような「仕掛け」、若者が移り住む「きっかけ」を、それぞれの地域で生かしたい。
 
 
 <小さなこと重ねて>
 超高齢社会への備えばかりがつながりを必要とする理由ではないと思うのです。
 身近な人間関係が薄れれば、人は国家や民族という漠とした集団に帰属意識を求めるのかもしれません。自らの価値観や利益に見合わない者、大勢に同調しない者にいわれのない非難を浴びせる風潮として表れています。
 それに、他者との間に境界線を引いた暮らしは物足りない。
 「以前の職場は残業続きで、食事も掃除もなおざりにしていた。小さなことをきちんとやる積み重ねが、本当の『生活』なのですよね」。ハウスで暮らすCHC理事矢田浩明さんの言葉です。
 人との関係づくりも、日常の小さなことの積み重ねから始められる。そうして、しなやかなつながりを紡いでいきたい。
 充足感をもたらす日々の体験の中には常に人との関わりがあります。人と在る時間をもっと大切にしていくことを、この1年の目標にしようと思っています。 (1月1日)

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