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【京都新聞】 新しい年に  世界とヒトの秩序が揺れる

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 未来だと考えていた21世紀に入ってから随分と時がたち、2018年になった。
 世紀の初頭、二つの大戦と東西冷戦を終えて、新たな秩序として姿を現すのは「帝国」だと、近代史に詳しい野田宣雄京都大名誉教授が予言していた。
 米国の一元的な支配だけで世界の安定を得るのは難しく、欧州連合(EU)やロシア、中国などが副次的な帝国を形成し、域内の秩序を守るために力を行使するというのだ。
 北朝鮮の核・ミサイル開発、米国のテロとの戦い、クリミア半島や南シナ海で起きたことと、その背景をみると、歴史は野田氏の予言通りに進んでいるようだ。
 世界の秩序が揺れており、日本もその枠外にはない。
 内憂外患を直視する
 国内に目を向けると、安倍晋三首相の政権復帰後、5年になるが、デフレ脱却はままならず、少子高齢化と、付随する諸問題が解決されたわけでもない。
 今年も、これらの内憂外患を直視し、向き合っていくことになる。加えて、憲法改正論議の行方や、天皇陛下の退位に向けた準備にも目配りせねばなるまい。
 内憂外患は国を基軸とした言葉であろうが、ヒトを中心に見渡すとどうなるか、考えてみたい。
 昨年暮れ、凍結保存されていた受精卵を、別居中の妻が無断で用いて生まれた女児を巡る訴訟の家裁判決があった。
 家裁は、父子関係がないことの確認を求めた男性の訴えを却下したが、母体に受精卵を移植する行為には、夫の同意が必要との見解を示した。
 同様の訴訟が、ほかにも起きている。今後も、子どもや家族のあり方がケースごとに、判断されるのだろうか。一般的になったとされる生殖補助医療の現状に、法整備が追い付いていない。
 ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)の研究は、京都大の山中伸弥教授らの作製発表から10年を経て、精子や卵子の元となる細胞をつくる段階に入った。
 国は、同細胞由来の受精卵をつくることを禁じている。しかし将来、再生医療への期待の高まりとともに、対応がどのように変化するかは見通せない。遺伝子操作の問題も絡んでこよう。
 倫理面の課題が、積み残しになっている。
 このような動きは、病気などへの対処に新たな希望をもたらす一方で、ヒトのあり方を大きく変化させる。時には、内憂となって現れるのではないか。
 有効求人倍率が1・5倍を超えている。人手不足は明らかだ。
 解決法の一つとして、人工知能(AI)の活用による仕事の代行が挙げられよう。そうすれば、生産性の向上にもつながる。
 仕事を代行するAI
 みずほファイナンシャルグループは昨年、10年間で従業員数を約1万9千人削減する計画を発表し、業界に衝撃を与えた。AIを用いてヒトの事務処理を減らし、超低金利時代を乗り切る構えだ。
 同様の動きが多方面に波及している。AIを活用すればするほど作業の効率がよくなり、人件費を抑制できる。今後、こうした計画は、ますます推進されそうだ。
 では、AIに取って代わられたヒトには、どのような仕事が残っているのだろう。かつては、単純作業は機械に任せて、もっと人間らしい、創造的なことをすればよい、といった考え方があった。
 それはAIが、単にプログラム通り動いていた時代の話である。近年は大量のデータをもとに、知識だけでなくルールを学習できるようになっている。
 脳の仕組みをまねた「ディープラーニング」の導入によって、データの特徴を見つけ、判断することもできる。これが、車の自動運転や、がん細胞を発見する画像認識の技術に結び付いた。
 すでに、将棋や囲碁のトップも負かしたのだから、そう遠くない将来、あらゆる分野でヒトの能力を超えるとされている。そうなると、ヒトに残された仕事はあまり見当たらなくなりそうだ。
 AIが自分自身で学習し、人類の予測できない進化を遂げ、暴走するという説まである。
 異論を唱える研究者もいるが、著名な物理学者のホーキング博士は数年前、「完全な人工知能が開発されれば、それは人類の終焉(しゅうえん)を意味するかもしれない」と予言したという。
 暴走の危機どうする
 知らないうちにAIが帝国を築き、ヒトを支配することもありうるのではないか。その場合は、ヒトの生みだしたものが、ヒトの外患となってしまう。
 作家アシモフ氏の小説「われはロボット」(ハヤカワ文庫)によると、未来の社会では「ロボットは人間に危害を加えてはならない」「人間に与えられた命令に服従しなければならない」などの原則が定められ、AIに組み込まれている。今のうちに、暴走を止める仕組みを考えておきたい。
 今年は、iPS細胞やAIの研究に、人材や資本がさらに集中するだろう。ヒトをめぐる秩序が揺れる年ともなる。

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