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【富山新聞】 大和堆の北朝鮮船 臨検、拿捕辞さぬ強い姿勢を

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 この国の行く末に、漠とした不安を抱えるなかで、新しい年が明けた。北朝鮮情勢が悪化の一途をたどり、そう遠くない時期に米朝間で軍事衝突が起きるのではないか。そうなれば弾道ミサイルが日本に飛んでこないとも限らない。一触即発の危うい状況が心晴れぬ理由である。
 昨年6、7月のイカ漁最盛期に、北朝鮮の漁船が大挙して、日本の排他的経済水域(EEZ)に入り込み、わが物顔で違法操業を始めた。好漁場である「大和堆(やまとたい)」は、700~800隻の木造船で埋め尽くされ、石川県漁協のイカ釣り船団はトラブルを避けるため、操業を諦めざるを得なかった。
 やがて秋になり、海が荒れがちになると、貧弱な装備の木造船はひとたまりもなかった。日本海が大荒れとなった11月下旬には、大和堆周辺で木造船約60隻が転覆している光景が目撃されている。昨年1年間、日本海側に漂流、漂着した木造船は12月28日正午現在で103件を数え、統計を取り始めた2013年以降最も多い。人知れず沈んだ船を含めると、いったい何人の命が失われたのだろう。
 北海道の松前小島に上陸した北朝鮮の乗組員3人が地元漁民の避難小屋から、発電機などを盗んだ疑いで逮捕されたこともあった。避難小屋は当時無人だったが、もし、日本の漁師がいたら、どうなっていたか。
 輪島沖で救助された北朝鮮船の乗組員は、船には15人が乗り込んでいたと話していた。冬場は住民が20人ほどになる舳倉島に、北朝鮮船が漂着したら、と思うとぞっとする。北陸をはじめとする日本海沿岸では、かつて北朝鮮の工作機関による拉致被害が続発した。北朝鮮船がイカ漁ではなく、破壊工作を主目的にするようになったらそれこそ一大事だ。
 北朝鮮船の漂流、漂着を食い止め、日本海沿岸に住む人々の暮らしを守るには、大和堆周辺海域での違法操業を徹底的に取り締まるほかない。貴重な燃料を使って大和堆まで来ても、採算が取れないと分からせることが肝要だ。そうすることで、北朝鮮の漁師たちを遭難死させずに済む。
 海上保安庁は放水銃の使用などで延べ約820隻の北朝鮮船に警告し、8月中旬以降、ほぼ姿を消したと説明した。だが、日本海側に大量の木造船が漂流、漂着したのは、その後も違法操業が横行していた事実を物語る。
 例え放水して追い払ったとしても巡視船が去れば再び舞い戻ってくるため、効果は薄い。北朝鮮船の乗組員は小銃を持っていたり、日本のイカ釣り船の集魚灯を目当てに接近したりするなど危険な行為に及ぶという。
 日本のイカ釣り船が安心して操業できるようにするには、臨検(立ち入り検査)や拿捕(だほ)などの実力行使が欠かせない。海上保安官にも危険が及びかねないが、万全の対策を取り、違法操業に強い姿勢で臨まねばならない。
 北朝鮮は水揚げしたイカのうち、良質なものを輸出しているという説がある。国連安保理決議は北朝鮮の水産物輸出を全面禁止している。日本政府は、経済制裁を徹底する意味でも取り締まりを強化すべきだ。
 海上保安庁は日本海の警備強化を目的に、2020年度の導入を目指して大型巡視船の新造に着手し、監視用の航空機の配備を検討している。大型巡視船の追加配備は心強いが、現場海域に投入されるのは3年先であり、それを待っている時間はない。速やかに臨検や拿捕に着手し、平穏な海を取り戻してほしい。
 韓国の海洋警察は一昨年11月、違法操業をしていた中国漁船2隻を拿捕した。このとき、周囲の中国漁船から体当たりされそうになるなど妨害を受け、機関銃600~700発を中国船に向けて警告射撃している。ロシアも北朝鮮の密漁船に対し、同じような対応をしている。
 海上保安庁の取り締まりも「国際標準」に合わせて変えていかねばならない。臨検、拿捕の手順を再確認したうえで、新たな法の整備が必要ないか、支給されている装備で対応可能かどうかを詳細に検討し、必要な措置を講じてもらいたい。不法操業を見逃さず、実力で排除する断固たる姿勢を見せる必要がある。

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