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【中日新聞】 ピンポン外交の地から 年のはじめに考える

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 今年は日中平和友好条約締結から四十年の節目です。日中の新たな扉を開いたピンポン外交の地から、隣国との絆を確かなものにする道を考えましょう。
 一九七一年に名古屋を舞台に展開された「ピンポン外交」は「小さな白球が地球を動かした」とまで言われる大きな出来事です。
 当時の日本卓球協会会長だった後藤●二(こうじ)・愛知工業大学長が困難を乗り越え、名古屋へ中国卓球チームを招きました。その努力が米中関係の緊張緩和につながり、七二年には日中の国交も正常化しました。
 ようやく改善の兆しが見られる日中関係ですが、歴史を振り返ると、その原点はピンポン外交にあるともいえます。中部地方に暮らす私たちは平和友好条約四十年の節目に、その重みをもう一度かみしめ、隣国と平和共存できる未来像を考えてみたいものです。 地方同士の「雨天の友」
 中部六県で中国の省と友好関係を結んでいるのは愛知県と江蘇省、岐阜県と江西省、三重県と河南省、長野県と河北省、福井県と浙江省、滋賀県と湖南省です。市町村レベルまで含めると友好関係は四十八を数える層の厚さです。
 二〇〇八年の胡錦濤国家主席訪日の後、中国首脳の公式訪問は途絶えています。日本政府の尖閣国有化などに中国が強く反発した一二年以降は「政冷経涼」と言われるほど関係は冷えこみました。
 そうした冬の時代に、地方政府や民間の交流が日中関係を下支えしてきたことを高く評価したいと思います。国のトップ同士がそっぽを向き、公的な交流が次々とストップする中、自主的に交流を進めるのは勇気のいることです。
 愛知県の大村秀章知事は昨年十一月下旬、江蘇省を訪問して呉政隆省長と会談し、青少年交流の重要性で意見の一致をみました。
 若者が交流を引き継いでいく重要性は言うまでもありません。ただ、愛知県と江蘇省のトップ交流が重みを持つのは、日中関係がまだ悪かった一六年に大村知事が訪中して当時の石泰峰省長と会談し、両国関係を改善する追い風にと地方レベルの交流を推進する必要性で合意したことです。
 「雨天の友」という言葉があります。逆境の時に支持したり本人のことを思って厳しい忠言をしてくれる友人のことです。愛知県と江蘇省の絆の確かさは、どしゃぶりの日中関係の中でより強くなり、国と国のパイプの機能不全を補ったと言えます。
 残念ながら、名古屋市と江蘇省都・南京市の公の交流は一二年から止まったままです。河村たかし市長の「南京大虐殺はなかったのではないか」との発言がきっかけです。市長の信念かもしれませんが、歴史認識に違いのある敏感な問題で、一方的な見解を公にしたのは、配慮が足らなかったと批判されても仕方がありません。 日中支える石ころに
 とはいえ、民間交流の熱意が衰えていないことに心強さを感じます。今月六日から八日まで名古屋市で開かれる「中国春節(旧正月)祭」は十二年目を迎えます。中部地方に暮らす中国人らが実行委員会を引き継いできた日本最大の春節祭です。昨年は十四万人が訪れ、本場の中国料理や舞踊、雑伎などを楽しみました。
 留学生を支援する「名古屋−南京促友会」が毎年末に開いている日中友好ボウリング大会は今年で二十回目を迎えます。会顧問の韓金龍さん(56)は「民間交流は続けていくことに意味があります。節目の今年は娘の韓謐(ひつ)(28)に責任者を引き継ぎ、末永く友好の種をまいていきたい」と言います。
 南京出身の韓さんは現在の名古屋市と南京市の関係に心を痛め、平和友好条約四十年の今年、両市の留学経験者を中心に民間の友好訪問団の相互交流を実現しようと準備に取りかかりました。
 韓さんは「平たんな道を作るにも、その基礎には大小さまざまな砂利が必要です。私は日中をつなぐ道を支える石ころの役目を果たしたい」と話します。 「知中」から始めよう
 末永く、地道に−。政治の風向きがおかしくなっても、このような思いで民間交流を支える人たちがたいまつを引き継いでいけば、日中関係の未来は揺らぎません。
 愛知大と南京大が昨年末に共催した中国語スピーチコンテストで津田塾大四年、斎藤沙也加さんは「すべての人が親日派、親中派になるべきだと言いたいのではなく、相手国を好きかどうか考える前に相手国を知るべきだと思います」と述べ、隣国の人々や国情を理解する重要性を訴えました。
 「嫌中」も「親中」も感情的で視野の狭い見方です。冷静に「知中」の視点で交流しようという若者の主張を頼もしく感じます。再び扉を押し開く現代の「ピンポン外交」になるかもしれません。 ※●は金へんに甲  

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