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【読売新聞】 世界経済 安定成長に影落とす保護主義

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 ◆日本は多国間連携の先頭に立て◆
 世界経済は「100年に1度の金融危機」とされるリーマン・ショックの影響から、ようやく完全に脱しつつある。
 グローバル化時代に安定した成長を続けるためには、主要国が従来以上に緊密な連携に努めることが求められる。
 経済協力開発機構(OECD)は、2018年の世界経済の成長率を、17年の3・6%を上回る3・7%と予測している。
 調査対象の45か国は全て、17年にプラス成長を果たしたとみられる。07年以来、実に10年ぶりとなる。この流れを強めたい。
 ◆トランプ流どう抑える
 08年の金融危機後、世界の貿易伸び率が経済成長率を下回る「スロートレード」が目に付いた。
 国際通貨基金(IMF)によると、17年の貿易伸び率は3年ぶりに経済成長率を超えた模様だ。
 日米独など先進国で雇用の改善が進み、株価も上昇基調が強い。主要国の景気の底堅さが需要の拡大を促し、貿易を活性化して新興国も潤す好循環がみられる。
 一見すると先行きは盤石のようでもある。しかし、一皮めくれば落とし穴が少なくない。
 懸念材料の一つは、「米国第一」を掲げるトランプ大統領の保護主義への傾斜である。
 就任早々に環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱した。米国と自由貿易協定(FTA)を結ぶカナダ・メキシコや韓国に対しては強引に再交渉を認めさせた。
 米国が一方的な輸入制限を強行すれば、相手も対抗措置を講じざるを得なくなる。
 望むと望まざるとにかかわらず、保護主義政策の拡散をもたらす事態を招くのは明らかだ。
 トランプ氏の思惑とは裏腹に、保護主義の震源となる米経済への打撃は他国を上回ろう。
 米政府は、互恵的な貿易を発展させてこそ自国に利益をもたらすという現実を直視すべきだ。
 自由貿易を守るため、日本が果たすべき役割は大きい。
 ◆中国は不透明さ拭えず
 米国を除く11か国のTPPと、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が大筋合意に達した。日本は、早期の署名と発効を目指し、関係国・機関との調整を加速させることが重要だ。
 両協定のメンバー国は、米国の主要な貿易相手でもある。協定域内の貿易割合が高まると、米国は不利な立場に追い込まれる。
 両協定の成果を上げれば、米国でも多国間の枠組みを再評価する機運が高まるのではないか。
 米国に次ぐ規模の中国経済は、依然として、内実の不透明さが世界の主要リスクに挙げられる。
 都市部の不動産バブル、実質破綻した国営企業の温存、金融機関が抱える不良債権など、抱える火種は枚挙にいとまがない。
 今のところ当局が抑え込んでいるが、対処を誤れば、新たな国際金融危機につながりかねまい。
 ◆新興国のマネー注視を
 17年7月の主要20か国・地域(G20)首脳会議で公約した鉄鋼過剰生産の解決などに、本腰を入れて取り組むことが大切だ。
 6%台半ばで推移する成長率は政府目標に沿うが、統計の信頼性に欠けるとの指摘もある。
 G20などを通じて各国との情報共有に努める必要がある。
 欧州では、英国のEU離脱交渉が通商分野を扱う新たな段階に入る。ヒト・モノ・カネの移動の自由がどう変化するのか。英国進出企業が1000社を超える日本にとっても人ごとではない。
 経済界からは、英EU間の関税の行方などについて、決定時期だけでも明確にしてほしいといった切実な声が上がっている。
 EU内外に混乱を招かぬよう、英国とEUが十分に協調して交渉を急ぐとともに、経過の透明性を確保せねばならない。
 アジアや南米の新興国は、先進国の緩和マネー引き揚げに備えることが当面の課題だ。
 米国では、18年中に3回程度の利上げが見込まれる。IMFなどの国際機関は、新興国の資金不足の兆しに十分な警戒が要る。
 経済のグローバル化は各国に恩恵をもたらす一方、一つの国・地域で起きたショックが波及する速度と大きさをも高めている。
 とりわけ北朝鮮や中東の地政学リスクが顕在化すれば、その影響は計り知れない。
 多くの国は景気拡大が本格化する大事な局面にある。避けられるはずのショックに事前に手を打たなければ将来に禍根を残そう。
 各国政府には、様々なリスクに注意を凝らし、その防止に全力を注いでもらいたい。

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