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【京都新聞】 世界と日本外交  「分断」をどう乗り越えるか

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 米国のトランプ政権が発足して間もなく1年になる。移民や人種などに関するトランプ氏の発言や政策は、米国内に潜む「分断」をあらわにさせている。
 2018年を迎え、「分断」は世界でも広がろうとしている。そう思わざるをえない事態が昨年末に起きた。
 「私たちから数億ドルや数十億ドルも受け取りながら、私たちに反対する国があれば、やらせておけばいい。米国は大いに節約できる」
 エルサレムをイスラエルの首都と認めた米政府にその撤回を迫る国連総会決議が採択される直前、トランプ氏が語った言葉だ。
 波及するトランプ流
 決議案に賛成すれば、援助を打ち切るぞ、という脅しである。
 その後の総会では米国連大使が「賛否を覚えておく」とまで言い切った。
 国連決議は圧倒的多数で採択された。しかし中米ニカラグアは大使館をエルサレムに移す方針を明らかにした。
 ニカラグアに対する主要援助国は米国である。同国は決議に反対した。脅しが効果を上げた形だ。
 「米国第一」のためには世界の分断もいとわない。過去の政権が控えてきたことも実行する。
 「民主主義の旗頭」としての米国の姿は見られない。トランプ流外交はこれまでの国際秩序を大きく変えようとしている。
 国連総会で日本は、事前に米国に入念な説明をした上で決議案に賛成した。長年の独自外交で築いてきたアラブ諸国との関係を重視してのことだ。
 河野太郎外相が中東を訪問し、イスラエルとパレスチナ双方に当事者間の交渉を促した。その一方で、安倍晋三首相は発言を控えている。
 北朝鮮が核・ミサイル開発を続ける中で、対米関係に細心の注意を払う必要があることは理解できる。
 安倍首相は現在、世界の指導者の中でトランプ氏と最も親しいとされる一人である。「米国第一」がもたらす世界の分断とマイナスの効果について、直言すべきではなかったか。
 エルサレム承認は、国内の支持者向けの行動という指摘もある。
 米国では今年秋、中間選挙が行われる。支持者向けのトランプ流「米国第一」の政策は一層強まるのではないか。
 トランプ政権は貿易や安全保障を巡り日本にこれまで以上の負担を求めてくる可能性もある。日米関係の歴史や原則を踏まえた対応が必要だ。安倍政権の姿勢が問われよう。
 日中関係改善を模索
 中国は現代版シルクロード構想「一帯一路」を強力に推し進めている。
 中国から中央アジア、中東、欧州、アフリカへとつながる構想だ。東南アジアや中東諸国にはすでに巨額の中国資金がつぎ込まれ、各国と中国の関係強化が進む。
 こうした中、安倍首相は距離を置いていた「一帯一路」を、自身が描く「インド太平洋戦略」と連携させる方針に転じた。対中けん制路線からの転換である。
 経済成長を続ける中国に食い込むため、各国は中国指導部との関係構築に腐心している。
 安倍首相は以前からインド太平洋戦略について、中国への対抗措置ではない旨を示唆していた。安全保障と経済的利益を考えれば、早期の路線転換が賢明かもしれない。両国関係の改善を進め、安倍首相と習近平国家主席の相互訪問につなげてほしい。
 北朝鮮情勢は緊迫したまま年を越した。
 国連安保理による10回目の制裁決議が昨年末に採択された。中国とロシアも賛成に回り、圧力がこれまで以上に強まった。
 北朝鮮国内ではすでに制裁の影響が出ているとも伝えられるが、金正恩政権に譲歩する気配は見られない。
 国際連携の再確認を
 米国では強硬論も出ている。一方、中国やロシア、韓国の対話を模索する姿勢は変わらない。安倍首相は「最大限の圧力」を強調するが、戦争は日本の選択肢としてありえない。北朝鮮を交渉の場に引き出すため、各国と協調、連携して知恵を絞りたい。
 中東では、シリア内戦が収束しつつある一方、イエメンの内戦で数千人の市民が死亡。700万人が飢饉(ききん)に直面するなど深刻化している。
 背景にはイランとサウジアラビアの覇権争いがある。イランはロシア、サウジは米国の支援を受けている。
 トランプ政権がサウジとの関係強化を進める一方、今年、大統領選を控えるロシアのプーチン政権も国内世論を踏まえれば米国との妥協は難しい。大国の論理が事態打開を阻んでいる。
 欧州では、ドイツ・メルケル政権の行方が懸念される。連立交渉は越年した。ドイツでもあらわになったポピュリズムは、EUの根幹を揺るがしかねない。
 安倍首相は各国指導者の中で最も古株の一人だ。経験を生かし、世界の「分断」ではなく「統合」へ力を発揮してほしい。

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